Show Hinomaru;「がんの延命治療」から「がんの治癒」へ

シカゴは今週に入っても寒いが、4月の東京の雪はもっと珍しい。こちらも来週には最高気温が20度前後、最低気温が10度少しと、ようやく春が訪れそうだ。通勤時に歩く歩道横の芝生も一気に緑が濃くなった。歩道沿いにある家の庭先にも、ちらほらと花が咲き、朝の風も心地よくなった。

そんな中、天皇、皇后両陛下が8日、戦後70年の「慰霊の旅」として、初めて西太平洋のパラオに入られた記事を目にした。両陛下が願われていた現地での慰霊ができて本当によかったと思う。日本国の象徴が、激戦の地に慰霊に赴かれることは、戦後70年と言う節目に非常に意義のあることではないだろうか。震災後の慰問にもご尽力されてきたが、日本人の一人として、両陛下の言動は、心から誇りに思う。

話は、突然変わるが、今年に入って、前回のブログで紹介したシンポジウムに加え、シカゴ大学で開催されるセミナーは(私が基礎生物学的な発表に目を魅かれないバイアスがあるかもしれないが)、分子標的治療開発、個別化医療、がん予防、免疫療法など、診断や治療に直結するセミナーが花盛りだ。免疫療法に関連するものは一気に多くなった。

そして最大の変化は、「がんに延命効果がある」という発言に限られていたがん治療が、「がんを治癒する」という発言者が増えたことである。50%生存率が9ヶ月が11ヶ月に延びたと鼻高々だった研究者が、体を小さくするような状況が起きている。私たちが開発に携わった薬剤がそこにまだ至っていないのは残念だが、「がんを治す」と研究者が言い始めたことに時代の変化を感ぜざるを得ない。がんを治癒させるのはもはや夢物語ではない。

このような急激な変化が起こりつつあるにもかかわらず、日本では依然として、近藤誠氏が高い人気を誇っているようだ。焚きつけたメディアの責任だろうが、情けない話だ。今頃、「がんと闘うな」と言っていては、世界の笑いものだ。本や雑誌が売れれば、健康被害が出てもいいのか?また、世界的にみて全く存在感の無い国立がん研究センターが、日本で最もいいがん治療施設の評判を維持していることも大きな謎だ。日の丸の誇りなどどこからも見えないセンターだ。これでは、「がん治療後進国」だと言われてもしかたがない。

このような状況下で、明確な戦略・戦術もなく、「医療産業」を経済活性化の柱にするといっても、かけ声だけに終わるは火を見るよりも明らかだ。役所のビジョンでは、常にこんなことをしよう、あんなことをしようと、当然のことが並べられている。当たり前のことがなぜできてこなかったのか、なぜ、医薬品の輸入超過が2兆円近くまで膨らんだのか、その課題・問題点を掘り起こし、それらに切り込んでいかなければ変化が起きるはずがない。

利権を守るための仕組み、面子を維持するための妨害・いやがらせ、お金に群がる詐欺師たちなど、現状に心地よい人たちは、必ず屁理屈をつけて改革に待ったをかける。この岩盤に風穴を開けない限り、日本が医療で世界をリードすることなど百年、いや、千年経ってもありえない。

シカゴに移って3年、ますます、日本の存在感が霞んでいく。「Show Hinomaru」と叫びたい。

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