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腫瘍免疫ゲノム学-7; がんの治癒に挑め

医療(がん免疫・免疫ゲノム学)

Natureという雑誌に「Radiation and dual checkpoint blockade activate non-redundant immune mechanisms in cancer」というタイトルの論文が紹介された。放射線治療と免疫チェックポイント抗体を併用すると効果が相乗的になること、これらの治療に対して、がん細胞が抵抗性を獲得するのに、がん細胞でのPD-L1の発現上昇があることが示された。

 

今や、臨床腫瘍分野では、猫も杓子も、免疫チェックポイント抗体である。患者さんの持っている免疫能力をさらに高めるために何ができるのか、これにもっと注力しなければならない。マウスのモデルにおいて、CD8細胞という種類のリンパ球(がん細胞を殺すことのできるリンパ球)を作れないようにすると、放射線治療が効かなくなるとの報告があった。おそらく、古典的な抗がん剤や分子標的治療薬の効果にも、がん組織内や周辺での免疫系の働きが重要であることは確実だ。がん組織や全身の免疫系細胞の動きをリアルタイムで捉えることが絶対的に必要となってきた。

 

これによって、がん治療に対する意識変革が起こりつつある。今までのがん治療は、数ヶ月の延命効果を示すことを競ってきた。3ヶ月も延長すれば、薬剤としての承認を得ることができる。数ヶ月でも、副作用なく長く生きられればいいが、副作用に耐えながら生活している患者さんは少なくない。こんなことを言うと、近藤誠氏に足元を掬われそうだが、彼に組するつもりはない。数ヶ月の延命を積み重ねて、白血病などは治癒できるがんのひとつになってきた事実を忘れてはいけない。逃げていては、何も変わらないのは明白だ。

 

しかし、今、世界中の研究者は、延命ではなく、がんを治癒させることを本気で考えるようになってきたのである。まだまだ、ハードルは高いと思うが、「治癒」が夢の目標ではなく、しっかりと視野に捉えられる状況となったのである。たとえば、複数の転移がある患者さんでも、1ヶ所にがん特異的ワクチンと免疫チェックポイント抗体を注射し、さらに、その部位に放射線をかけてがん細胞を殺せば、非常に高い免疫反応を起こすことができるかもしれない。そして、残りの転移巣も叩けるかもしれない。

 

こんなチャレンジができれば、自らの手でやってみたいと思う。また、築地の新聞社の攻撃目標にされるかもしれないが、がんを治癒させるには、患者さんの協力を得て、壁をぶち破るしかない。ただし、進行がん患者に余命を告げることが、標準治療としてすべき最良の治療と信じている臨床医が多い日本で実施可能かどうか疑問だ。日本の若者に、深い眠りの中で、夢を貪るのではなく、是非、患者さんのために闘って欲しいと切望する。1980年には、ベルリンの壁が壊されるなど、夢想だにしなかった。挑戦しない限り、新しい道は開けない。

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