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I have a dream

昨日は、人種差別問題に取り組んだマーチン・ルーサー・キングJrの生誕を祝う祝日だった。彼の“I have a dream”を繰り返した演説は有名で、繰り返し画像で流される。昨年は白人警官が黒人を射殺したケースが連続して起こり、キング氏の”I have a dream”の演説が改めて注目された年でもあった。

オバマ大統領は“Yes, we can”のフレーズで一気に大統領へ道を突き進んだ。今は、共和党が上下院ともに多数派となり、苦戦を強いられているが、やはり、何か夢を持ち、その夢を実現するにするために、必死になって「Yes, I can」と頑張ることは大切だと思う。その観点では、政権を担うべき政治家が「夢」を語らなくなったように感じてならない。

いろいろな評価はあるだろうが、池田勇人・田中角栄といった元総理には、国民に夢を持たせるビジョンがあった。中曽根元総理には、国の在り方に対する哲学があった。90年代になって日本の地盤沈下が始まり、停滞した状況を打ち破るべく、国民は民主党政権に夢を抱いたが、無残に砕かれた。党首選をニュースで読んでフォローしていたが、どんな国にしたいのかというビジョンが全く伝わってこない。野党再編でも、そうでなくともいいが、単に反安倍政権を掲げるだけで、あまりにも哲学がなく、再生に向けたエネルギーを生み出すどころか、ますます、冷却の方向に向かっている気がする。

社会状況と連動しているのかどうかわからないが、「大志を抱く」、「夢を持つ」ことが、21世紀の遺物になってしまったのかと思うくらい、最近の若者からは、熱気が伝わってこない。10年ほど前に、文部科学省のがん研究担当者が若手研究者(といっても40歳前後)と懇談する機会を設けて欲しいと依頼してきた。その意を受けて、日本癌学会の会場で20人前後の将来のがん研究を担うと期待していた研究者とのミーティングを設定した。

50歳以上のものは口を挟まないようにと、事前に言われていたので、黙って聞いていた。「今後のがん研究はどうあるべきか」という文部科学省担当者の質問に対して、若手から出てくるコメントは「明日の自分の研究費に対する不安と要望」ばかりであった。終わったあとの文部科学省からのコメントはここには書かないが、彼らは当然ながら大いに失望した。私が歳を取りすぎたのか、それとも、私や私の癌学会の仲間が異例で、若いときから生意気で態度が大きかったのか、いずれかはわからないが、世代間格差は大きい。

最近特に問題と感ずるのは、自分の目標(興味のある研究対象や解決したい医学的な課題)があって、それに向かって挑むのではなく、研究費が獲得できそうな分野を選択する研究者の姿勢である。「ゲノム」研究に予算がつくと「ゲノム研究者」が一気に増え、「脳研究」「再生医療」「iPS細胞」と研究費を追いかけて、研究対象を変えていくカメレオン研究者が増えてきている。自分の色をはっきりと主張できないものかと歯がゆい思いをしている。

もちろん、若手研究者を取り巻く環境が、明日の自分の糧を求める姿勢を増幅したのかもしれないが、「I have a dream」「Yes, we can」と語る若者がたくさん現れるのを期待したい。そして、それらの夢が、明日の自分の糧を得ることでなく、国の将来、患者さんの期待を担う夢であってほしい。

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