2014年最も辛かった日

久しぶりにシカゴ美術館に行ってきた。外は氷点下であったが、風も弱く快晴だったし、時差ボケ解消の意味もあっての外出だ。電車で出かけたが、片道3ドル、30分弱の行程であった。美術館には、私の好きなモネ、ルノワール、セザンヌなどの印象派の絵画がたくさんあるし、行くたびに異なる日本の浮世絵を楽しむことができる。いつものように印象派の絵を楽しんだ後、浮世絵を見に行った。

 

浮世絵コーナーはなんと「Ghosts and Demons in Japanese Prints」と表され、見ていても楽しくない題材ですぐに退散した。とても新年を迎える気分の浮世絵ではない。次いで、特別展示に向かったが「Temptation: The Demons of James Ensor」で、またもDemonで、これも見ていてよくわからない。そこで、普段行くこともない写真の展示に行ったが、これは最悪であった。飛び降り自殺(自殺かどうかは定かではないが)の瞬間の写真が十数枚並べて展示されてあった。とてもArtと呼べるような代物ではない。こんなもの見たくはないと思い、足早に立ち去った。

 

沈んだ気持ちで美術館を去り、買い物に出かけ、帰りがけにあるマンションの前を通りすぎた。その瞬間、今年最も辛い思いをした日が脳裏によみがえった。3月にシカゴ大学で治験を受けるために患者さんが借りていたマンスリーマンションである(7月31日のブログ参照)。患者さん親子がタクシーに乗り込んだ時の姿が、今でも強烈に記憶として残っている。美術館で見た、楽しくもない絵や写真と、患者さんとお嬢さんが感じた絶望が重なってしまう。

 

と同時に、残された人生をどのように生きるべきなのかを考えさせられた瞬間でもあった。確かに、低分子化合物や抗体医薬品の開発は日々進んでいる。日本より恵まれた環境にあるといっても、治験はやはり時間がかかってしまう。患者さんに希望を提供することができても、笑顔を取り戻すまでには至っていない。一人で空回りしていても何もできないことはわかってはいるが、もう少し速やかにことが運べないものかと気が焦る。

 

民主党政権に自分の人生を賭けたが、見事に空振りをしてしまい、再起を期して米国に来た。3回目の正月を迎える今、多くのことを学んだものの、日本の患者さんの役に立つには至っていない。昨日の国立がん研究センター解体的出直し論も、日本には絶対に必要な要素であると思う。抜本的改革が必要だと叫ばれて久しいが、日本は何も変わっていない。

 

帰りの飛行機で。堤未果さんの「沈みゆく大国アメリカ」というタイトルの本を読んだ。確かに米国の医療費はとんでもなく高いし、個人破産の半数以上は医療費によるものだ。オバマケアの問題点も詳細に記述されていた。アメリカは大変だが、医薬品・医療機器で輸入超過が2兆円を超えている日本は、もっと大変ではないかと思う。

 

沈みゆく夕日を見ながら、沈みゆく「日の丸」への不安がよぎったが、杞憂であってほしいと願う。

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