免疫薬理ゲノム学(3);食物アレルギー・自己免疫疾患

食物アレルギーで、真っ先に私の頭に思い浮かぶのは、ピーナッツアレルギーである。5年ほど前に、フットボール選手か、サッカー選手かは忘れたが、恋人とキスをした後に、アナフィラキシーショックを起こして急死した話をニュースで知った。原因は、キスをした相手の女性がピーナッツバター入りのサンドイッチを食べ、キスをした際にピーナッツの成分が、その選手に伝わり、そのわずかなピーナッツが大人一人を殺したのである。

 

日本では、エビ・カニ・そばが食物アレルギーの原因としてよく知られている。最近では、牛乳や卵などのアレルギーも増えている。米国では、毎年、100人前後がピーナッツを食べることによって命を落としている。イギリスでも数十人であるが、日本では皆無ではないが非常に少ない。民族差が明白である。

 

ある研究者とこの話をしているときに、「実は私もピーナッツアレルギーで、アドレナリンの入った注射器を持ち歩いている」といって、注射器を示された時には、こんな身近にもいるのかと驚いたことがある。米国では、ピーナッツアレルギーの患者が飛行機に乗る際には、機内で「このフライトはピーナッツ禁止」であるというアナウンスがある。これを無視して、ピーナッツを食べ、機上でショックでも起きれば責任追及は免れない。大韓航空の副社長も、機内にナッツアレルギー患者がいれば、あのような大騒動につながらなかっただろうにと思う(ただし、ナッツでも地中にできるナッツと、木に実るナッツではかなり性質が異なる)。

 

免疫薬理ゲノム学(1)で紹介したが、あるHLA(ヒト白血球抗原)とある薬剤の組み合わせが、不都合な免疫反応を誘発し、重篤な薬疹を引き起こす。食物アレルギーは間違いなく、免疫系の異常な反応によって引き起こされているので、免疫系の細胞を徹底的に調べていくことが、食物アレルギーの原因解明につながると考えている。

 

たとえば、ピーナッツから抽出した成分を、アレルギー患者の樹状細胞とTリンパ球に混入して、活性化してくるようなリンパ球のT細胞受容体を調べれば、アナフラキシーを引き起こす原因に特定に至るのではないだろうか。

 

食物アレルギー患者は、原因物質の摂取を避ける、治療法として最も確実である。しかし、加工食品などに含まれている成分をチェックするのも大変である。外食などして、ピーナッツバターなどが少量含まれていても、症状を誘発するので、うかうか外食などできない。また、避けているだけでは、病気の本態解明には絶対につながらない。

 

HLAに関しては数十年前から、個人間の多様性の解析研究が進んでいるが、T細胞受容体やB細胞受容体に関しては個人ごとに遺伝子に多様性があるのか明らかになっていない。自己免疫疾患でも、多くでHLAとの関連性が示されているが、それが病気の発症にどのようにつながっているのか定かではない。この研究分野にとっても、T細胞やB細胞の徹底的な解析は極めて重要である。

 

私は、これから5-10年間、一気に免疫ゲノム学、免疫薬理ゲノム学が進展し、免疫と病気との関連が明らかにされると確信する。ここでも世界に遅れると日本の医学の未来はない。 

続きは次回に。

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