米国オバマケアから見た日本の皆保険制度

11月を過ぎると、日本の研修医マッチング制度に相当する、病院での研修医(予定者)に対するインタビューが始まる。シカゴ大学メディカルセンターは、単に医師としての技量を修練するだけでなく、研究志向の高い医師を養成することを目指している。私は(米国での医師資格はないが)医師として勤務していた研究者として、インタビューを担当している。

 

シカゴ大学の内科は、かつての日本の内科のように、心臓内科、腎臓内科、腫瘍内科、内分泌内科など10を超えるセクションがあり、助教授以上のポジションは200名を超える。研修医の応募は3000を超え、約10分の1が面接に至り、30名が採用されるという超狭き門である。もちろん、インタビューに選ばれた医学生たちは、非常に優秀で、自分たちの考えをしっかりと持っている。

 

研究と言っても、基礎医学だけでなく、社会医学に関心の高い者もおり、平等な医療へのアクセスに関心を持っている学生もいる。私も通称オバマケア(公式名称はPatient Protection and Affordable Care Act、患者保護と適切な医療を提供するための法案)の行方を見守っている。米国では医療保険に加入していない人も少なくなく、オバマ大統領は、2008年の大統領選挙で最低限の医療を受けることができるこの法案を目玉の一つに掲げていた。

 

日本は公的皆保険で、どの地域に住んでいても保険適応される医療が規定され、平等なアクセスが保証されている、しかし、米国では、オバマケアで国民全員が何らかの医療保険に加入したとしても、加入している医療保険によって、カバーされる検査、医薬品、治療法が異なっている。医療費が高騰する米国では、たとえ医療保険に入っていたとしても、保険の枠を超えると自己負担となり、それが自己破産につながる原因となっている。歯科の保険は別枠であり、私の加入していた保険はカバーできる範囲が狭く、歯科の治療で月給の大半が消えたことがある。この時には、重篤な病気に罹ると、自己破産「むべなるかな」と思った。

 

私的な医療保険会社は、会社である以上、収入が支出を上回らなければ生き延びていけない。したがって、医療費が高くなれば、保険料も上昇する。どこまで、持続可能なのか、それが、社会的に大きな問題となっている。日本も決して他人事ではない。皆保険制度と言っても、国が打ち出の小槌を持っているわけではない。国が負担する医療も年金も、税金でカバーされているのである。

 

一時大きな話題となった「消えた年金」は、もはやどこかへ行ってしまった。年金事務所に電話しても、たらい回しにされたあげく、消えたままの私の年金記録など、どうにもならず、お手上げ状態である。ボヤキ漫才ではないが(古すぎて通じないかもしれないが)、「責任者出てこい」と叫びたい。もちろん、皆保険制度の破たんも、非現実的な話ではなくなってきた。

 

ニュースで知る限り、総選挙の争点は「アベノミクス」が成果を挙げているのか、いないのかに絞られ(他にも争点はあるのだろうがよくわからない)、医療の行方も、年金の向かう先もどうなっているのか不安である。緊急事態となっても、医療を受けることができない人たちがいる米国の状況を目にして、日本はいろいろな意味で、平和ボケではないかと思えてならない。

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