読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

大阪でもエボラ検査を????

医療(一般)

Y新聞のニュースに「大阪でもエボラ検査を…時間かかると住民に不安」との見出しで記事が出ていた。記事には「検査キットがあれば大阪でも確認できるという。」とあり、「結果が出るまでに時間がかかると、住民に不安が広がる。迅速に検査できる態勢を整えるべきだ。エボラ出血熱のウイルスは空気感染せず、府の施設でも対応可能だ」との知事のコメントがでていた。エボラ出血熱という病気を理解した記事とは思えない。

 

検査キットがあれば、大阪でもできる。空気感染しない。その通りだ。しかし、インフルエンザのように簡単にキットで調べればいい、というものではない。発症する時点では、膨大な数のウイルスが患者血液やその他の体液中に含まれる。感染疑いであれば、「陽性」であること想定して、試料の搬送を含めた検査体制を整えねばならない。感染のリスクを考えれば、しっかりとした施設で、ちゃんとしたトレーニングを受けた者が取り扱わねばならないことは自明の理である。西アフリカでは、医療従事者が二次感染している事実を忘れてはならない。

 

しかし、(厚生労働省の資料を見つけることはできなかったが、)感染症研究の基幹研究施設である長崎大学熱帯医学研究所のウエブページによると、エボラ出血熱ウイルスはBSL4(バイオセイフティーレベル4)の施設で取り扱わねばならないとある。最も厳重な管理が必要な施設だが、現時点で稼働しているBSL4の施設は日本にはない。それならば、BSL3でしか稼働していない国立感染症研究所で、どうして診断が可能なのか?

 

国立感染症研究所の平成24年3月の「エボラ出血熱診断マニュアル」には「国立感染症研究所においては,現在のところ感染性のあるエボラウイルスの取り扱いが認められていないので,血清学的診断のための抗原の作製にエボラウイルスを用いることができない.そこで組換え核蛋白を抗原とした診断法を開発し,採用している」とある。「用いることができない」は「調べることをできる」と同じではないが、この検査法はどうなったのか?

 

ニュースではPCR法(遺伝子増幅法)で診断したとあった。その後、マニュアルを改訂したのかもしれないが、エボラウイルスの存在を想定して、PCR診断したのなら、ウイルスの取り扱いが認められていないことと矛盾する。さらに、この検査で陽性になれば、次はどうするのか?陽性になった時点で、感染性のあるエボラ出血熱ウイルスが大量に含まれる試料となることが確定するが、患者試料をどう扱うのか?と疑問は膨らむ。「用いる」ことはできないが、「調べる」ことはできると言い逃れるのか?「取り扱いができない」との整合性をどうとるのか?不思議な役人言葉だ。このようなあいまいな、姑息な対応ではなく、想定できない感染症の発生も考慮に入れたBSL4施設稼働が日本には絶対に必要だ。

 

さらに、同マニュアルには「ウイルス性出血熱が疑われた患者から採取された血液は,採取翌日までに当研究室に届けることが可能であれば,血清分離することなく冷蔵のまま当研究室に輸送されることが望ましい.しかし,血清分離を行った上でドライアイス詰めにして当研究室に輸送してもかまわない」とある。文章の始めが「エボラ出血熱」ではなく「ウイルス性出血熱」となっている部分に、何か意図があるかもしれないが私の頭では理解できない。しかし、エボラ出血熱疑い患者から採取した血液を、どこの施設で血清分離せよというのか?陽性を考慮に入れたリスク管理ができていない。また、ネットでは「エボラ出血熱検査PCRキット」なるのもが販売されているが、ここに至っては、どこでだれが購入するのか、頭がおかしくなりそうだ。

 

と問題は抱えているものの、これまでの疑い例への対応は間違っていないと思う。これまで調べた患者さんが陰性だったから、大騒動にはなっていないし、かえって問題点が洗い出された意味では、いい訓練になったと思う。特に、東京都内の疑い例が診療機関に受診していたケースは、大きな反省材料として生かされれば、たとえ、エボラ出血熱が日本に上陸しても、被害を抑え込むために役立つ。ただ、陰性例が続くと、オオカミ少年のようになって、社会が鈍感になってしまうので、要注意だ。

 

冒頭の記事に戻るが、診断に時間がかかると不安かもしれないが、感染が広がれば、不安などというレベルではない。たかが検査、されど検査である。検査ミスも、検査の過程での感染も許されない。この感染症の実態をしっかり理解したうえで記事を書かなければ、単なる安っぽい情緒的な迎合記事に過ぎない。メディアの果たす役割を噛み締めてほしい。

f:id:ynakamurachicago:20141111115914j:plain