中村研究室の事件簿(1)

前回、ハワイで起こった事件を書いたが、1989年に日本に帰国後、2012年に離日するまでの23年間、振り返ればいろいろなことがあった。中村研究室のメンバーには誰のことかすぐにわかるだろうが、部外者にはわからないような形で残せるものだけ、事件簿として残しておきたい。みなさんが、同じ失敗をしないために。 

1. さつまいも発火事件

癌研究所にいた時の事件である。土曜日の研究室のセミナーの最中に、技術員のひとりが、研究室から煙が出ていますと駆け込んでした。私の研究室は5階にあったが、全員が入ることのできる部屋がないため、2階の講堂でセミナーをしていた。あわてて廊下に出て、階段を駆け上がっていくと、煙は濃くなるが、焼き芋のようなにおいが漂ってくる。研究室にたどり着くと電子レンジから煙が漏れている。開けるとむき出しのままのさつまいもが1個、煙を上げていた。おそらく酸欠で火は消えてしまったのだろうが、まだ、煙は残っている。犯人に聞くと、焼き芋を作ろうとしたらしい。ラップで包むと100度以上には上昇しないが、むき出しだとマグネシウム・銅などの金属を多く含んでいるさつまいもは高温になるので発火したものと思われる。かつて、濡れた財布を電子レンジで乾かそうとして発火した話をきいたことがあるが、金属成分の高いものを電子レンジで温めるのは絶対にしないように!

 

2. 電子レンジ爆発事件

これも癌研究所にいた時の、電子レンジにまつわる話である。我々の研究ではよく寒天を利用する。寒天に電気を通すとDNA寒天の中を移動するが、DNAの大きさに応じて動く速さが異なるので、大きさの違いを識別するために用いるからである。日本で利用される乾燥した寒天よりもゼリーに近い感じである。高温の水で解けて、溶液になり、温度が下がると固くなる。頻回に利用するので、あらかじめ溶かして固まった寒天のようにしてガラス瓶に保存している。温度が高くなると水蒸気が出で瓶内の圧力が上がるので、あらかじめ蓋を緩めておかないと爆発しかねない。と注意をしているのだが、忘れたのか、不十分だったのかわからないが、蓋を十分に緩めないまま、電子レンジにかけた。部長室でコンピューターに向かっていた時に、突然、爆発音が鳴り響いた。かけつけると床にはガラス片が散乱し、電子レンジが開き、砕けたガラス瓶が見えた。けが人はいないようだし、出火もしていないようなので、恐る恐る近づいて、電子レンジの中を覗き込んだ。驚いたことに、レンジの内側の金属にガラス片がつき刺さっているではないか。怒るのも忘れ、しばし呆然としていた。頭でわかっていても、現実に見ると恐ろしいものである。けが人が出なかったので笑い話で済むが、その瞬間に、もし、研究員が、寒天が解けたかどうか電子レンジを覗き込んでいたらと思うと、今でもゾッとする。

 

3. 骨折事件

私の知る範囲で、自損で骨折した人が3人いる。一人は、忘年会の帰りに自転車に乗って帰る途中、溝に落ちで、膝蓋骨(いわゆる膝にあるお皿の骨)を真二つに折った研究員がいた。翌日来ないので、事情を聞いたところ、その時は酔っ払って痛みを感じなかったが、自宅にたどり着いた後、激痛が起こり、病院に駆け付けたところ骨折がわかったとのことであった。あとの二人は同じ原因だが、遠因は私にある。私は、今もカッとしやすい方だが、若いころはもっと激しく、頭に来た時によく何かを蹴飛ばしていた。しかし、もちろん、自分を傷つけるようなヘマはしないで、柔らかいものを蹴っていた。それを見ていたためか、私のマネをして、怒りに任せて蹴飛ばしたが、相手の方が固くて、足の指を骨折してしまったのだ。一人は何を蹴ったか知らないが、もう一人はソファを蹴飛ばしたのだが、当たり所が悪くて骨折した。マネをするのはいいが、よく考えないとだめだ。かつて、ある教授が講義中に尿がどんな味がするのか自分で試した後に、学生を前に呼び出して試させたことがあったらしい(伝言なのか、どこかで読んだのか、記憶が定かでない)。学生が嫌々指を突っ込んでなめって感想を言った。すると、教授が、「私は中指を入れたが、口に入れたのは薬指だ。観察力が足らない。」と言ったそうだ。本当の尿でなかったと信じたい。もし本物だったら、今なら、間違いなく、パワハラで懲戒解雇ものだ。しかし、研究者は観察力が鋭くないといけないのも事実である。

f:id:ynakamurachicago:20141102134848j:plain