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体感温度と無責任縦割り社会

シカゴ

シカゴ大学に赴任してしばらくした頃、オフィスの私の椅子の真上から冷たい風が吹き付け、寒くて体調が悪くなったので、ヒーターを買って足元に設置した。しかし、頭の上から冷風。足元から暖風で、日々体がだるくなるので、何とかしてほしいと施設係に訴えた。温度調節器は3つのオフィス共有で、一部屋にしかなく、私の部屋にはない。体感温度が違うので寒いと訴えたが、「悪いが何ともできない」と冷たく一言を残して帰って行った。

 

そこで、自己防衛策として、冷風の出てくる部分をアルミホイルで覆って風が出てこないようにした。オフィスのドアを開けると廊下から隙間風が入ってくるが、ドアを開けておく幅で温度調整をして、無事2年間過ごしてきた。ところが、今週の火曜日に施設係が「ちょっとはいってもいいか」と言ってオフィスに入ってきて、私に断りもなく、アルミホイルをはぎ取るではないか?私が座っているにもかかわらず、真上にあったそれを。何をしているのだという間もなく、無造作にとるので、2年間たまっていた埃は私の頭上に舞い落ち、急にのどがイガイガしてくる。

 

頭に来て「何をしているのだ」というと、「ここで風を塞いでいるので、空調システムエラーがでている」と断定的に言う。「2年間このままの状態だったのに、急におかしくなるはずがない」と私が怒って反論すると、「風量はメインのコンピューターでコントロールしているので、こんなことをされては困る」という。では、2年間、どうなっていたのだ!「寒い環境で凍えながら仕事をしろというのか」と迫ると、「温度調節はちゃんとする」と答える。「2年前に依頼したが、できないといわれたのでこうしたのだ」と食い下がると、「私は半年前から働いているので、私の関与しないことだ」と言う。

 

ここで、アメリカに来て蓄積されてきた不満が一気に爆発した。ケーブルテレビ会社、電力会社、大学の事務、航空会社、どこに行っても、このセクショナリズムが横行する。同じ会社であっても、自分が関与したことでない限り、「私は関係ない」「ここの部署の担当でない。どこどこに連絡してほしい」で、ことが済まされる。決して「アイ・アム・ソーリー」を聞くこともない。無責任というか、責任の分散というのか、エボラ出血熱の拡散にみる責任のあいまいさそのものだ。

 

「江戸の敵を長崎で」ではないが、我慢ならず、「私は私の健康を守る権利がある。これで体調を崩せば、君が責任を取るのか」と声を荒げて言い返した。さすがに少しは反省したのか、「ベストを尽くす」と言って出ていった。しかし、その後、彼は部屋に顔を出さない。代わりの人が翌日顔をだし、どうかと尋ねた。前日の夕方からせき込み、のどが痛くなり、声が出にくくなったので、そのしわがれた声で、「温度は少し寒く感じる程度だが、昨日埃を浴びで、一気に声が出なくなった。一言も断らず、頭上でアルミをはぎ取るからだ」と振り絞るような声で返事した。

 

それでも、「同じ温度調節器を使っている人が、暑すぎると訴えているのだが」と言うので、「だから、アルミホイルで自己防衛していたのだ」と言うと、何も答えず部屋から出ていった。自由の国、米国で、部屋の温度が自分で設定できないというのはどういうことだ。3部屋共通といっても、体感温度は違うでないか、こんな理不尽がまかり通るのか、と思うと悪寒がしてきた。その後、発熱と倦怠感に見舞われ、言い争う力も尽き果てた。夜は咳込んで十分に眠れず、さらに、風邪薬で眠くなり、その中で、来客と会議が連続し、体力、気力共に消耗した1週間だった。

 

「体感温度」の差は、おそらく体内におけるエネルギー産生量の違いが反映しているのだろうが、私は変温動物のごとく、寒い部屋では体が冷え切って、首や肩が凝り、頭も回転しなくなる。したがって、米国内の会議に参加する際には、下着を2枚重ねるか、ホッカロンを背中に貼るようにしている。2名以上の会議に参加する際には仕方がないと思っているが、自分の部屋くらいは自分に適する温度にさせてほしいものだ。

愚痴が多くなったついでに、米国型の縦割り組織は、大きな弊害を生み出しているような気がしてならない。我が家では、引っ越し時に契約してから2年間、ケーブルテレビのオンデマンドサービスがまともに働くことなく、契約を解除した。電話をしても案内が流れるだけでなかなかつながらない上に、つながってもわれ関せず、同時に契約したインターネットも寸断状態でとうとうしびれを切らした。

 

また、電気も、ある日突然部屋の半分だけ停電するという事件があった。私の部屋は、もともと2部屋であったものを一つの部屋にしたものである。半分の契約ができておらず、電気料金未払いで突然切られたらしい。数十年前から一部屋になっているし、前のオーナーからは何の申し送りもなかったので、驚いた。管理会社に聞けば、あるいは、直接、私に聞けば簡単にわかることを、何もせず、断りもなく電気を切る。こんな調子で、海外に行って商売をしてもうまくいくはずがないと思う。病床でこの文章を書きながら、米国製品の輸出を伸ばすには、この縦割り無責任体制を見直すことが必要なのではないか?と思いつつ、また、咳が出て発熱してきた。文章を書き、怒りが再度込み上げてきたからか?

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