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医療都市・ロチェスター

医療(一般)

一昨夜はメイヨー財団のゲストハウスでの会食に参加した。この建物は、メイヨー家が保有していたものを財団に寄贈したものだ。メイヨークリニックの歴史を象徴する建物である(写真参照)。メイヨークリニックの名前は日本でもよく知られているが、私は7年前までメイヨークリニックとは全く縁もゆかりもなかった。

 

理化学研究所のゲノム医科学研究センターとNIH傘下の薬理ゲノム研究ネットワークとの共同研究を契機に、米国臨床薬理学のドン的な存在であるメイヨークリニックのRichard Weinshilboum教授との交友が始まった。彼は、ジェントルマンという称号がぴったりの人物である。

 

2006年ニューヨーク州のロングアイランドにあるCold Spring Harbor研究所で開催された「Pharmacogenomics」の会合にFrancis Collins教授(当時は National Human Genome Research Instituteの所長、現NIH所長)と共にオープニング講演者として招かれた。ここでのWeinshilboum教授との接点がなければ、今回メイヨークリニックに招かれることはなかったと思う。

 

この2006年の会合で、米国の薬理ゲノム研究ネットワークと理化学研究所の共同研究の話が持ち上がり、理化学研究所のセンターは、国際HapMap計画に次ぐ、世界的な活躍の場を与えられることになったのである。この舞台を通して多くの研究者との交流が始まったのだが、Weinshilboum教授は特別な存在である。共同研究という言葉の響きは美しいが、多くの研究者は「相手を利用する」ための方便として使っている。しかし、彼とはお互いを尊敬しつつ研究を進めることができ、彼との議論は楽しい。

 

と個人的な話を終わりにして、ミネソタ州のロチェスターについて紹介したい。ロチェスターはミネソタ州最大の都市ミネアポリスから百数十キロのところにある、人口約10万人強の小さな町である。気候はシカゴよりもさらに寒く、市内の大きな建物は、屋外に出るのを避けるため、地下あるいは2階に相当する渡り廊下でつながっている。

この町はメイヨークリニックの門前町と言えるくらい、メイヨーの存在が大きい。10万のうち、研修医を含む医師の数は5000名、61,100人がメイヨー財団関係で雇用されているという。2012年のデータによると、米国50州のすべてと150か国から患者がやってきており、総患者数は116万人である。これに次ぐ企業体がとしてBMであるが、世界に冠たる医療産業都市であることは間違いない。 

この小さな都市には、ロチェスター国際空港がある。ボーディングブリッジがわずか4つの小さな空港であるが、国際空港である。メイヨークリニックには上述したように米国内だけでなく、世界中から診療を受けにやってくる。中東からプライベートジェットでやってくる患者さんもいるので、この空港がその窓口になっている。しかし、医学部の歴史は浅く、メイヨー医学校は1972年に始まったに過ぎない。ただし、この医学校の競争率は募集46名に対して約4500名が応募するという非常に狭き門である。

 

日本も医療産業の活性化を謳うなら、関西空港や成田空港を核にしてにこのような大きな構想の医療都市を作ることを考えればと思う。この周辺に製薬企業や医療機器企業などを集約すれば、大きな流れを作ることができるように思う。

 

最後に、Weinshilboum教授の話に戻りたい。彼は1967年に医学部を卒業しているので、米国のシステムを考えると私より年齢が一回り以上上だと思う。昨年1月にメイヨークリニックを訪問した際には、空港までの送り迎えを彼自らがしてくれた。行く際にはロチェスター空港から15分なので、申し訳ないと思う気持ちはあったものの、この臨床薬理学の大御所が迎えに来てくれたことが嬉しくもあった。しかし、翌日は、濃霧が立ち込め、ロチェスター空港は閉鎖となっていた。空港まで送ってきてくれた彼は、私がミネアポリス空港からシカゴに帰らなければならなくなったことを知り、なんと、自らミネアポリス空港まで2時間かけて送ってくれたのである。もちろん、ミネアポリス空港からメイヨーまで運転して帰らねばならない。Weinshilboum教授は、この日合計5時間近いドライブをしたことになる。この時を振り返ると、ありがたさよりも、申し訳ないという気持ちが100倍くらい強くなり、タクシー(といってもロチェスター空港には1台も見当たらなかったが)で向かわなかった自分が恥ずかしい。

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