続々と開発されるがん新規治療薬

米食品医薬品局(FDA)が9月4日、米製薬企業メルクの免疫チェックポイント阻害剤、抗PD-1抗体、Keytruda(キートルーダ)、(商品名ペンブロリズマブ)を承認した。日本では小野薬品のPD-1抗体が承認されている(もとは米国の会社のもの)が、米国では抗PD-1抗体としては初めての承認となるとなる。

 適応となる疾患は、切除不能あるいは転移性のメラノーマ(悪性黒色腫)である。2011年以降、メラノーマに対してFDAが承認した薬剤は、これ以外にも5種類ある。Ipilimumab (イピリマブ)(2011)、 peginterferon alfa-2b(ペグインターフェロンアルファ2b) (2011)、 vemurafenib(ベムラフェニブ)(2011)、 dabrafenib(ダブラフェニブ)(2013)、trametinib(トラメチニブ) (2013)の5種類である。インターフェロンを除き、新しい仕組みの薬剤が、4年弱の間に5種類も承認されている。

キートルーダ、イピリマブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ・・・・・と続くと、どれもこれも舌をかみそうだし、何回聞いても、読んでも頭に残らない。漢字と違って、カタカナは、私の記憶中枢に刺激を与えないようだ。翻訳物の小説を読んでも、カタカナで書かれた人物名が頭に入らず、登場人物が区別できずに錯綜するため、途中で投げ出すことが多いが、そんな心境だ。一つの薬剤名が頭に馴染む間に、2-3種類新しい薬剤が生まれるので、お手上げだ。

話を戻すと、イピリマブ (商品名エルボイ)は、免疫チェックポイント(がん細胞を免疫細胞から守る役割をしている分子、CTLA-4)に対する抗体医薬品で、原理的には抗PD-1抗体と類似している。いずれも、全身の免疫細胞に影響を与えるので、自己免疫病的な副作用が一定の割合で出現する。しかし、詳細は省くが、CTLA-4とPD-1はいずれも免疫に対してそれを抑える働きをもっているが、仕組みが異なるので、二つの抗体の効果や副作用は異なっている。これらに加え、ペグインターフェロンも免疫を活性化するという観点から、3種類の薬剤は免疫療法に分類される。

これに対してと、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブは、いずれもメラノーマ細胞でBRAFに特定の異常が起こっている場合に適応される分子標的治療薬である。ベムラフェニブとダブラフェニブは、異常を起こしたBRAFに直接作用し、トラメチニブはBRAF異常によって働きが高まるMEKと呼ばれる分子に作用する。これらは、がんの詳細な遺伝子解析をもとに作られたものだ。

FDAは、重篤または生命を脅かす疾患に用いる新薬を対象に迅速承認制度を適応しており、今回もこれが適応された。この制度によって承認を受けた新薬は、市販後も有効性の調査を継続することが義務付けられている。抗PD-1抗体医薬はメルク社以外にも、他社が開発を進めているものがあり、腫瘍の縮小率が高いので、注目を集めている。メラノーマだけでなく、多くの種類のがんでの治験が進められており、がん治療の風景を一変させるかもしれない。

メルクはキートルーダの患者1人当たりの薬剤費を、月12,500ドル(約125万円)、1年間続けると15万ドル(約1500万円)としているそうだ。ちなみに小野薬品のNivolumab(ニボルマブ)は、9月2日に薬価収載され、体重70㎏の患者だと、1回約103万円、3週ごとに投与するので、1年間だと1750万円となっている。非常に高い価格設定だが、抗体医薬は一般的に高いし、他の分子標的医薬品と比べると、驚くほどの高さではない。今後、さらにがん免疫療法薬が多数開発されると期待されており、がんの免疫療法薬の年間売上高は2025年ころには数兆円に達するとみられている。日本、さらに危うしである。

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