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(続)エボラ出血熱:扇動的報道と危機管理

医療(一般)

今年のシカゴは本当に涼しいが、今日は最高気温が20度に届かず、風も冷たく寒く感じた。こんな異常気象の中、エボラ出血熱による死亡数が1000人を超えたと発表された。一向に改善されない状況で、読売新聞リポート欄に「エボラ出血熱、正確な情報を伝える試み」という記事があった。正確な情報を伝えることの重要性は議論の余地がない。しかし、この中では扇動的な記事の問題点を指摘しつつ、英ガーディアン紙のジェームズ・ボール記者の記事を引用し、「今年2月、アフリカ諸国でのエボラ出血熱感染が認知されてから現在までに、マラリアで約3万人が、結核で60万人が亡くなっているという。『エボラ出血熱が関心の的となっているが、アフリカで最大の問題というわけではない』『特定の地域に住む人々への偏見が高まる恐れがある』」と述べられていた。

 

今、世界が直面しつつある大きな危機を全く理解していない。エボラ出血熱の問題は、いま流行している地域、あるいは、アフリカの問題ではない。世界全体が対応しなければならない大きな脅威に対する問題である。もし、日本の満員電車の中に、一人のエボラ出血熱感染者がいれば、その後、日本でどのような状況が起こるのか、最悪の事態を想定して対応するのが危機管理である。患者一人ひとりを隔離して、感染の拡大を防ぐ重要性が叫ばれている中で、「アフリカ最大の問題ではない」と問題を過小評価することや「偏見が高まる」などとお決まりのきれいごとを言っていて済まされるのか考えて欲しい。

 

明日にでもヨーロッパのどこかで感染者が出るのではないかと懸念されている状況をしっかりと認識して、感染の拡大を防ぐことこそ、何十万、何百万人、何千万人の被害を避けるために不可欠なのである。一歩間違えば、自分の身近にこの脅威が迫るかもしれないという危機意識を共有して対応しないと取り返しがつかない事態となる。1918-1919年にかけて流行したスペイン風邪(インフルエンザ)では、5億人が感染し、4000万人―5000万人もの人が死亡した(致死率8-10%)と報告されている。世界の人口は当時の約3倍である。人口密集のレベルも格段に高い。エボラ出血熱感染による致死率(50%-90%)を考えれば、この感染症の流行を収束させる世界的な取り組みが求められる。決して、日本が安閑と他人事と考えている場合ではない。恐れすぎるのも問題だが、軽視できる問題ではない。

 

扇動したり、差別につながってはいけないことは当然であるが、問題を過小評価して感染が広がり、多くの人命が失われてならない。この感染症は空気感染せず、患者の血液や体液などに触れることで感染することは知られている。しかし、このようなことを十分に理解している医療従事者にも感染が起こっている事実から目を背けてはならない。少しの油断が、世界的大流行を招きかねないことを考え、そして、日本上陸の危険を回避し、もしもの場合にどう備えるのか、正確な情報の共有と対策が必要だ。

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