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STAP細胞の悲劇

STAP関連

STAP細胞事件は、とうとう、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長の自殺という最悪の悲劇に発展した。私も築地にある偏向した考えのA新聞社にいじめられて、自殺が頭をよぎった経験があるので、今回の事態は私にとって全く予期できなかった事態ではない。

 

本来は科学的に検証すべきものが、最初に華々しく打ち上げすぎた反動や小保方晴子氏の頑として非を認めない姿勢によって、完全にワイドショー化されしまった。その結果、副センター長として、責任著者として、メディア(私には、報道という名に値しない、低俗なゴシップ屋としか思えないが)の矛先が向かっていただけに、その重圧に耐えられなかったのではないだろうか。

 

笹井氏は、私のような雑草ではなく、京都大学医学部を卒業したエリート中のエリートとして育ってきた。36歳で京都大学の教授となり、再生医療の分野をけん引してきた。笹井氏とは個人的な交流は全くなかったが、文部科学省の委員会などで同席する機会が多かった。科学的見識が広く、ズバズバと正論を吐くタイプで、常にオピニオンリーダーとして委員会をリードされてきた印象が強く残っている。

 

私は精神的には強い方だが、新聞で叩かれた時には、途方に暮れるしかなかった。私に批判の目が向くように巧みに仕掛けられた悪意に満ちた記事に目の前が真っ暗になったことが、今でも深い心の傷として残っている。私の場合、幸いにも患者の会や仲間の支援があったし、他のメディアも某新聞社の悪意を感じ取り、後追い記事やニュースを流さなかったことで、死の淵から蘇った。

 

超エリートの笹井氏に向けられた悪口は彼の20年にわたる業績をすべて帳消し、マイナスにするだけの破壊力があった。今回の事件の責任は決して軽いものではないが、個人を死に追い込むような報道の在り方は、社会全体によるパワハラのように考えられてならない。

 

私は以前から指摘してきたが、今回の問題に対する理化学研究所の対応のまずさが、ボヤで消火できていた火事を、簡単に消すことのできない山火事のような事態にしてしまった最大の要因であると考える。もし、対応が早く的確であれば、日本の財産をここまで追い詰めるような状況にはならなかったのではなかろうか?また、この事態を受けて、メディアを含め多くの有識者と称する人たちは、「死ぬことまで考える必要はなかったのに」「惜しい人材をなくした」「これで再生医療に支障が出る」など、笹井氏に際する個人攻撃は止むであろう。

 

私は笹井氏のようなエリートではないが、根も葉もない批判を少なからず受け続けてきただけに、笹井氏の心境が全く理解できないことはない。「溺れた犬に石を投げつける」と言っても過言ではない、新聞や雑誌を売るための、視聴率を稼ぐための報道姿勢、そして、嫉妬を悪意に変換した学会などの過度ともいえる個人攻撃姿勢が改まらない限り、また、悲劇は繰り返されることになるだろう。研究者は、ある日突然、自分が悲劇の主人公になるかもしれない。

 

笹井芳樹先生の冥福を心からお祈りしたい。

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