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10年間で科学分野で最も影響力のあった研究者・国

雑事

 トムソン・ロイター社から2012年6月中旬に「Highly Cited Researchers(論文引用回数の多い研究者)」(http://highlycited.com/)が公表された。2013年にも公表されたが調査方法などの問題点が指摘され、それを改善して2014年版として発表されたものである。単年度のものではなく2002-2012年のデータをまとめたものである。したがって、注目されたひとつ論文が評価されるのではなく、長期間にわたっての科学分野での貢献・影響力が評価されるという観点では、これまでのものとは趣が変わったものと言える。

 

 調査は21分野別に分けて行われ、世界42カ国から3215名がリストアップされた。臨床医学分野では400名以上がリストに掲載されたが、その他の20分野では100-200人の名前が挙げられた。国別に比較すると、(1)米国1711名、(2)イギリス303名、(3)ドイツ163名とこの3カ国だけで、3分の2を占める。日中はいずれに軍配が上がったのか?残念ながら、中国は152名で第4位であるのに対して、日本は98名(全体の3%)で第5位であった。中国の急追といった状況ではなく、科学分野で日本は中国にすでに大きく水を開けられた状況となっている。この後の順位は、(6)カナダ88名、(7)フランス82名、(8)オランダ76名、(9)スイス67名、(10)オーストラリア65名と続く。アジアでは韓国が21名で第17位、シンガポールが14名で第20位となっている。

 

 科学立国と謳いながらも、しっかりした基本政策を怠ってきたことがボディーブローのように効いて、欧米から引き離され、中国に追い抜かれた現状に反映されている。世界のGDPに占める日本の割合を考慮すれば、日本の科学分野での貢献度は非常に低いと言わざるを得ない。特に臨床医学の分野は、その重要性が指摘されて久しいにも関わらず、402名中に日本人はわずか4名しか載っていない(1%未満)。この内3名は大阪大学の松沢佑次先生(現、住友病院)とその共同研究者であり、残りの1名はやはり大阪大学審良静男先生(私の医学部時代の同級生、この分野だけでなく、3分野でリストアップされている)である。結果的には、臨床分野で日本から世界的な貢献をしたグループは二つしかないと判定されたことになる。

 

 掛け声だけでなく、本質的、抜本的な見直しを行わない限り、10年後の調査では、日本はトップ10から名前を消すような事態にもなりかねないのではと憂慮している。役所が省益を優先するのではなく、国益を考えた取り組みを断行することが最優先であり、急務である。