日本の将来を担う若手研究者を励ます施策を!

NatureのCareer News欄に「Postdoctoral researchers warn NIH that cost-of-living pressures are gutting the workforce」というタイトルの記事があった。簡単にいうと「ポスドクたちの生活苦が労働意欲を削いでいるとNIHに警告した」と言った感じか? 米…

特定の人種を優遇する大学入試制度は違憲?!

1960年代から導入されていた米国のアファーマティブ・アクション(積極的に差別を是正するための措置)が憲法に違反しているとの判断を米国の連邦裁判所が下した。米国の大学ではマイノリティー(黒人やヒスパニックなど)の入学枠を広げているところが多か…

有識者の不見識な発言;日本の憂鬱

昨日の厚生労働省「がん有識者会議」で、「日本のバイオバンクは東北大学以外のものは小さい」という発言があった。2003年に東京大学医科学研究所でバイオバンクジャパンを立ち上げ、27万人弱の患者さん(疾患数の延べで44万症例)の協力を得た創始者として…

オーダーメイドのがんネオアンチゲンワクチン療法

6月16日に「Precision medicine meets cancer vaccines」という記事がNature Medicine誌に公開された。「プレシジョン医療(オーダーメイド医療)ががんワクチンに巡り合った」のだ。 メラノーマや膵臓癌がんに対するがんネオアンチゲンmRNAワクチンの有望…

腸内細菌と病気;造血幹細胞移植・免疫療法による腸炎・帝王切開

この1週間、腸内細菌といろいろな病気・病態との関連性を示す論文が目についた。 一つ目はCell誌に報告された「High-resolution analyses of associations between medications, microbiome and mortality in cancer patients」というタイトルの論文だ。造血…

エネルギー飲料を飲むと寿命が延びる?

Nature誌6月9日のNews欄に「Taurine supplement makes animals live longer-what it means for people is unclear」というタイトルの記事が出ている。これは6月8日のScience誌に公表された「Taurine deficiency as a driver of aging(タウリンが欠乏すると…

ChatGPTの遺伝学的知識は人間と同等?

European Journal of Human Genetics誌に「Analysis of large-language model versus human performance for genetics questions」というタイトルの論文が報告されている。 遺伝学分野の質問に対してChatGPTと人間のパーフォーマンスを比較した結果だ。85…

母の命日に想うこと

1999年6月1日、私の母が天に召された日だ。それから24年の歳月が流れた。大腸がんと診断されてからわずか1年の歳月だった。私は母が19歳の時に生まれたのですでに母よりも5年間長生きしたことになる。 自分で言うのも変な話だが、20世紀の中村祐輔と21世紀の…

雑誌の論文著者バイアス

5月26日のNature誌のCareer New欄に「Anonymizing peer review makes the process more just」というタイトルの記事が出ていた。多くの研究者が感じていることだが、「論文の著者を秘匿すると、論文審査がより公平・公正になる」という内容だ。Just(ice)が重…

デュシェンヌ型筋ジストロフィー遺伝子治療薬;希望と懸念と、そしてあくなき挑戦

5月24日のScience誌のニュースに「Muscular dystrophy gene therapy nears approval, but safety concerns linger」と言う記事が出ていた。 この記事は5年前にデュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子治療に参加した7歳の少年の話から始める。このデュシェン…

利己的メディアの「見ざる・聞かざる・言わざる」が日本を弱体化している

芸能事務所の元トップの性加害事件が世間をにぎわせている。その芸能事務所のスターがいなければ多くの番組は成り立たないのだから、知っていても見ざる聞かざる言わざるの姿勢を取らなければテレビもそれに繋がっている新聞社も生き残れないのだから仕方が…

アルツハイマー病の新しい分子標的?

Nature誌のニュース欄に「How one man’s rare Alzheimer’s mutation delayed the onset of disease」。これはNature Medicine誌に発表された「Resilience to autosomal dominant Alzheimer’s disease in a Reelin-COLBOS heterozygous man」の解説記事である…

個別化ネオアンチゲンワクチン;日本は国策として取り組むべきだ。

5月10日にNature誌からオンライン出版されたのが、すい臓がんに対してネオアンチゲンを利用した結果を報告した「Personalized RNA neoantigen vaccines stimulate T cells in pancreatic cancer」というタイトルの論文だ。ニューヨークのMemorial Sloan Kett…

コロナデータベースの危機

Nature誌の5月4日号のニュース解説欄に「GISAID in crisis: can the controversial COVID genome database survive?」という記事が出ている。私がコロナ感染症について語る時に利用していたGISAID(Global Initiative on Sharing Avian Influenza Data)とい…

シカゴ大学の友人来たり、懐かしや

大学ジャーナルONLINEに「日本の学術研究で新たな課題解決を研究する環境や研究時間の確保、女性研究者の登用など山積している課題が解決していないことが、文部科学省科学技術・学術政策研究所の定点調査2022で明らかになった。」という記事があった。 調査…

信頼は一日して成らず、失うは一瞬

3月24日号のScience誌に編集委員長が「Eroding trust and collaboration」というタイトルの一文を寄せている。 2018年のトランプ政権による中国を主とするアジア人研究者に対するスパイ容疑騒動で信頼を失った研究者の擁護のコメントだ。表題は直訳すると「…

デジタルミニマリズム

New England Journal of Medicine誌の3月30日号に「Digital Minimalism-An Rx for Clinician Burnout」という論評が掲載されていた。医師の「燃え尽き症候群」は米国の大きな課題となって久しい。それに対処するにはデジタルを有効活用する必要があると言…

痛めつけられた植物は声(音)を出す?

Natureの3月30日号のニュース欄に「Stressed plants ‘cry’-and some animals can probably hear them」というタイトルの記事が掲載されていた。そのまま訳すと、「ストレスを受けた植物は叫び声をあげ、ある種の動物はおそらくそれらを聞きわけることができ…

カビの生えた規定?

大阪に赴任して1年が経った。昨年の3月25日の閣議決定後に内示が出て、4月1日に大阪に着任という慌ただしい転居だった。したがって、東京の自宅を処分する時間もなく、多くの荷物を残したままだった。電気代、ガス代、水道代、インターネット代などの基本料…

ダルビッシュ有選手を国会に送ろう!

WBCでの大谷選手の活躍は日本の誇りだった。しかし、私が最も感銘を受けたのはダルビッシュ有選手の姿だ。国内キャンプ当初から参加して、若い選手をまとめ上げたのは、ダルビッシュ選手であることはみんなが認めるところだ。惜しげなく自分の技術を若い選手…

「日の丸」の誇り

昨日、彩都西駅からモノレールに乗り、スマートフォンでWBCの日本対米国戦にアクセスしたところ、ちょうど、ダプルプレーを取り、大谷投手がトラウト選手を迎える瞬間だった。得点は3対2、最終回2アウトで、大谷対トラウトはドラマに出てきそうな場面だっ…

胸が熱くなったサムライジャパン;医学界にも大谷翔平が必要だ!

今日のWBCの準決勝はしびれたし、最後は胸が熱くなった。9回裏の先頭打者の大谷選手の2塁への激走後の周りを鼓舞する姿、そして、3三振とどん底に見えた村上選手のサヨナラ打には感動した。サムライジャパンがサヨナラジャパンになるところで、メキシコを振…

人工知能の急速な進歩と日本の遅い歩み

3月16日のNature誌に「GPT-4 is here: what scientists think」というタイトルのニュースが掲載されている。最近、ChatGPTがすごいとこのブログに書いたが、3月14日にそれをアップグレーとしたGPT4がリリースされた。GPT4は画像処理も可能だと言う。かつて…

東日本大震災12回目の記念日

3月11日の昨日、福岡で開催された第87回循環器学会で真下記念講演を行った。内容は「AIホスピタル;AIとデジタルで心温まる医療を」だ。 2011年3月11日の東日本大震災は私の人生を大きく変えるきっかけとなった。2011年1月7日に内閣官房参与としての辞令を…

AIホスピタルプロジェクト ほぼ終了

一昨日、内閣府で、戦略的イノベーションプロジェクト「AIホスピタル」の最後の報告会があった。私からは、医療機関―企業―日本医師会の連携によって、現場のニーズから生まれたAIツールが、AIプラットフォームを通して、日本医師会を核とする医療機関に提供…

人工甘味料エリスリトールは脳梗塞・心筋梗塞リスクを2倍前後高める?

先週末からいろいろなことがあり精神的な面での負担が大きかった。さらに、木曜日と金曜日と連続して、私の通勤時間帯に阪急京都線で起こった人身事故の影響により、阪急北千里線が運休となり肉体的に疲れてしまった。木曜日は北千里線の途中の駅で止まり、…

高齢者の早期乳がんの乳房温存手術後に放射線療法は必要か?

2月16日号のNew England Journal of Medicine誌に「Breast-Conserving Surgery with or without Irradiation in Early Breast Cancer」というタイトルの論文が掲載されている。 かつては乳がんでは乳房全部を切除する方法が主流であったが、徐々に乳房を温存…

ChatGPT 対 Google Bard; 世の中は大きく変わる

「AI chatbots are coming to search engines — can you trust the results?」 (2月13日、Nature) 「ChatGPT: five priorities for research」 (2月9日、Nature) 「Abstracts written by ChatGPT fool scientists」(1月12日 Nature) など、AIチャット…

COVID-19関連小児多系統炎症性症候群・先天性の免疫異常との関連性;免疫ゲノム研究を推進せよ!

昨日、運動のために、京都に行ってきた。京阪七条(今は単に七条と呼ぶようだ)から三十三間堂・京都国立博物館を見学した後、清水寺まで登り、祇園四条(確か、昔は京阪四条と呼んでいた気がするが?)と歩くコースだ。清水寺に向かう坂道は結構急で途中の…

約束を破って記事にしたことを問われないのはなぜなのか?

首相秘書官は更迭されて、内閣は差別禁止法案に一気に舵を切ったように見える。発言が不当で差別的ならば、オフレコ発言を記事にすることが許されるのかという点については私は疑問だ。オフレコは発言内容を記事にしないという取材者側と非取材者側の約束・…