がんプレシジョン医療ー7;がん細胞を見つける

この範疇には、ゲノム情報を利用して、「がんを早期診断すること」、「がんの再発を超早期に診断すること」、「手術後のがん細胞の残存を診断する」、「がん細胞を定量的に計測すること」などが含まれる。 これらを可能にしたのは、DNAシークエンス技術や遺…

がんプレシジョン医療ー6

私の考えるがんプレシジョン医療の全貌を下図に示す。これらは、 1.がん細胞を見つける 2.がんの治療薬を選択する(外科療法や放射線療法が第1選択肢の場合が多いが、それらは省く) 3.がん免疫療法を提供する の3要素から成り立つ。 「プレシジョン医…

がんプレシジョン医療入門-5;後天的遺伝子異常(体細胞変異)とがん

がんは遺伝子異常によって生ずる病気である。これは歴然たる事実であるが、がん種毎に、起こっている遺伝子異常数は下記の図のごとく、非常に違ってくる。乳がんと肺扁平上皮がんでは一桁違うし、一般的に小児で生ずるがんでは、遺伝子変異数は少ない。最も…

稀少がん免疫療法+日本の医薬品輸入超過額、3年連続で2兆円越え

2017年度の貿易統計の速報値が公表された。昨年度に引き続いて、輸出が増え、輸入が減少したものの、依然として、赤字額は2兆円を超えている。これで3年連続、医薬品貿易赤字額は2兆円を超えている。小野薬品が抗PD-1抗体の国内特許を抑えていたからいいが、…

がんプレシジョン医療入門-4;遺伝的危険因子

遺伝的な危険因子を定義することは簡単ではないので、まず、わかりやすい例から紹介したい。食道がんには、喫煙と飲酒がリスク生活要因であることがよく知られている。これに、遺伝的危険因子が組み合わさった時に、食道がんのリスクがどのようになるのか図…

京大研究不正-3;抜本的な教育・研究体制の見直しが必要だ

京大研究不正問題で、山中先生を支援する声は大きい。是非、踏みとどまって、患者さんの期待に応えて欲しい。 しかし、この種の問題が起きるたびに、研究者や大学の管理体制が問われ、管理の厳格化が求められるが、私は、これは間違いだと思う。大学の教官は…

京大論文不正-2

山中伸弥先生の記者会見の様子をビデオで見た。「不正を防げず、無念」とのコメントだったが、私は不正など、組織がとてつもない努力をしても、防げるはずがないと思っている。性善説に経てば、努力によって防げるはずだが、世の中から犯罪がなくならないの…

京大論文不正;これでいいのか、日本メディア

ネットニュースで「京大iPS研で論文不正 山中伸弥所長が謝罪」という標題の記事を目にして、急いで記事を読み、論文を調べた。 産経新聞には「所長を辞職するか報道陣に聞かれ、『その可能性も含め、どういう形が一番良いのか、しっかり検討したい』と話…

がんプレシジョン医療;入門-3

次に、がんの遺伝的要因について話を進めたい。日本では、十分な遺伝学教育、特に病気と遺伝子の関連性に関する教育、が欠けているため、がんの発症に決定的な役割を果たす因子(決定因子)とがん発症の確率をわずがに高める危険因子が混同されることが多い…

がんプレシジョン医療;入門-2

親から子へ受け継がれる遺伝子多型で、がん治療に関係するものも当然ある。有効性に関連するものとしては、乳がんの治療薬タモキシフェンと薬剤代謝酵素CYP2D6がある。これに関する研究は、相対する研究結果が多数発表されたが、結果的には、質の悪い研究が…

がんプレシジョン医療;入門-1

「プレシジョン医療」という言葉は、オバマ前米国大統領が2015年の一般教書演説で、「プレシジョン医療イニシアチブ」を提案したことから、広く利用されることになった。オバマ氏の発言を借りて、「プレシジョン医療」のゴールを説明すると、「the right tre…

早とちりの大失敗;「魚釣島」と「釣魚島」

―昨日、時事通信のニュースを見て、日本名の魚釣島を、中国名(釣魚島)と早とちりし、下記の批判を書いてしまった。正直なところ、日本名で魚釣島があると思わなかった。「魚」と「釣」とあると反射的に中国名と思い込んで、毒づいてしまったのだ。ブログに…

がん予防は可能か?ガラパゴス的「日本の禁煙・ワクチン」施策

「CA Cancer Journal for Clinicians」誌のオンライン版で「Proportion and Number of Cancer Cases and Deaths Attributable to Potentially Modifiable Risk Factors in the United States」というタイトルの論文が公表された。日本語で意訳すると「人為的…

エイズに罹るサル・罹らないサル;どこが違うのか?

今朝は気温が久々にマイナス一桁台となり、歩いて通勤した。先週は完全防備していても2-3分歩くだけで体の芯まで冷え込む気候だったが、10度上昇すると体感的には全く違う世界だ。日中も、零度を超えて4度まで上昇した。この気温で暖かく感ずるのだから、人…

米国の行き過ぎた分業化による個人の無責任さ:私の2時間を返せ!

今日はコメディータッチで。 1年間の体の疲れをとり、気持ちをリフレッシュするために、12月25日から30日までマイアミビーチに行っていた。予約をした際には想像もできなかった厳寒のシカゴを少しでも回避できたのは幸いであった。最高気温27-28…

リアルタイム遺伝子解析時代はすぐそこまで!

IBMのワトソン(人工知能)のコマーシャルで、開業医が遺伝子解析結果を扱っている場面が紹介されている。人工知能は、専門的な知識を持たなくても、最先端の結果をユーザーが利用することを可能にする。日々更新されていく新しい技術や情報を入手する事は、…

厳寒のシカゴで迎える6度目の元旦

新年まであと2時間と少し。今現在、外気温はマイナス16度、明日の朝はマイナス20度まで下がる極寒の中で、新年を迎えつつある。「寒い」の一言しかない。予報によると、1月5日まで最高気温がマイナス10度を下回る。連日、過去最低気温を更新しそうで、6年…

T細胞系悪性腫瘍治療に光明?!

今月号のNature Medicine誌に「Targeting the T cell receptor β-chain constant region for immunotherapy of T cell malignancies」というタイトルの論文が掲載されていた。T細胞受容体を標的としたT細胞系の悪性腫瘍に対する新しい可能性を示した論文であ…

大石内蔵助になれ!

今年最後になる(はずの)羽田空港にいる。今回も忙しかったが、雑誌の取材、テレビの収録、役所の知人や医師との会合の中で、多くの心の波長の合う方々に出会った。本当に心と心が感じあった人たちの集合が世の中を動かせるのだと信じている。そして、そん…

テロリスク増大と大きくなる戦争の足音

日本国内では大きな話題となっていないが、トランプ大統領がイスラエルの首都をエルサレムと認定したことが、中東の微妙なバランスを壊し、不安定化要因を一気に増大させたと捉えられている。勢力が落ちたとはいえ、イスラム国が米国でのテロを予告している…

医療保険企業CEO年間所得に!!!!!

昨日、昼食時のセミナーで、デトロイトにある大学の教授の講演を聞いた。まず、デトロイトでは心臓発作による死亡率が全米平均の2倍くらい高く、その背景に高血圧が治療されないままに放置されていることが紹介された。肥満の割合が高く、医療へのアクセスが…

大腸がん診断後でも遅くない;繊維性食品を食べよう

1ヶ月少し前のJAMA Oncology誌に「Fiber Intake and Survival After Colorectal Cancer Diagnosis」というタイトルの論文が発表された。ステージ1-3期の1575名の大腸がん患者を追跡調査し、食物繊維摂取量と大腸がんによる死亡率やすべての要因での死亡率(…

経口ホルモン避妊薬は乳がんリスクを高める?!

今週の「New England Journal of Medicine」誌に、経口ホルモン避妊薬と乳がんのリスクを解析したデータが報告されていた。デンマークの15-49歳の全女性を追跡した結果である。デンマークの2016年度の人口は約570万人であり、この論文の対象とな…

ブログ500回目、そして、シカゴで迎える6回目の誕生日

今はシカゴでは12月7日、そしてあと8時間ほどで、日本では12月8日だ。太平洋戦争が始まった日から76年が経ち、私はシカゴで6回目の誕生日、65歳の誕生日を迎える。北朝鮮で戦争の足音が近づいていると危惧していたら、トランプ大統領がエルサレム…

膵臓がん長期生存患者にはネオアンチゲンとそれに反応するリンパ球が多い

膵臓がんは最も予後の悪いがんであり、5年生存率は依然として一桁台である。一般的にはステージ1で診断された場合には予後はいいが、膵臓がんに関しては約3分の2が再発する。11月23日号のNatureに長期生存膵臓がん患者の特徴を調べたデータが掲載されていた…

教育と知識ギャップ

今、羽田空港にいる。土曜日に羽田空港で飛行機を降りて、まだ、60時間しかたっていない。9月の後半からの2か月間で4往復は考えていたより、体に負担がかかる。しかし、今回は「がん患者さんや家族のために何かができれば」と思って東京にやってきた。最後の…

がん患者さん・家族・団体への恩返しのために

今年の日本の勤労感謝の日と米国のThanksgiving Dayは同じ日となった。勤労感謝のも日が11月23日に固定されているのに対し、米国のThanksgiving Dayは11月の第4木曜日となっているので、5-6年に一度しか同じ日にちにはならない。この頃から、正月明けまで、…

リキッドバイプシーで免疫治療の効果予測?

10月号の「Clinical Cancer Research」誌に「Hypermutated Circulating Tumor DNA: Correlation with Response to Checkpoint Inhibitor–Based Immunotherapy」(免疫チェックポイント抗体治療法の効果が、血漿中DNAに遺伝子異常が高頻度に検出されることと関…

相撲界のAlternative fact

シカゴは一気に冬に突入だ。今日は、久しぶりに晴れ上がったが、外の気温は午前11時にマイナス1度とすっかり冷え込んでいる。強い風も吹いていて、縮み上がるような感じだ。 そして、日本の相撲の世界がドロドロとしている。モンゴル人力士の飲み会で、横綱…

切除不能第3期非小細胞肺がん患者・化学放射線療法後の抗PD-L1療法

今日の「New England Journal of Medicine」誌に「Durvalumab after Chemoradiotherapy in Stage III Non–Small-Cell Lung Cancer」という論文が掲載されていた。Durvalumabは抗PD-L1抗体であり、対象となったのは、第3期の局所進行・切除不能肺非小細胞がん…