医療(がん免疫・免疫ゲノム学)

腫瘍免疫ゲノム学(2):がん組織内での免疫環境を規定する因子

大規模ながんゲノム解析や発現情報解析の結果から、遺伝子異常数が多いほど、CD8細胞の浸潤レベルの高いことを紹介した。われわれは、80症例異常の膀胱がんの遺伝子子異常を解析し、DNAの修復に関係する遺伝子に異常のある膀胱がんは、遺伝子変異数の多いこ…

腫瘍免疫ゲノム学(Oncoimmunogenomics)(1)「がん細胞での遺伝子異常が多いと免疫を強く活性化する」

Cellという雑誌の2015年1月号に「がん細胞における遺伝子異常とがん組織での免疫反応」に関する興味深い論文が報告された。英文のタイトルは「Molecular and Genetic Properties of Tumors Associated with Local Immune Cytotoxic Activity」である。…

免疫薬理ゲノム学(3);食物アレルギー・自己免疫疾患

食物アレルギーで、真っ先に私の頭に思い浮かぶのは、ピーナッツアレルギーである。5年ほど前に、フットボール選手か、サッカー選手かは忘れたが、恋人とキスをした後に、アナフィラキシーショックを起こして急死した話をニュースで知った。原因は、キスをし…

中村研究室の事件簿(2)

1. 鍵束持ち出し事件(新横浜と名古屋の間に停車駅を作って??) 多くの研究室では、研究室の部屋の鍵を束ねて、特定の場所に隠して管理している。私の研究室では、朝最初に来た研究員が(といっても私が最初のことが多いので、実質的には2番目)、全室の鍵…

がん免疫療法;米ファイザーとドイツのメルクの提携

今朝は予想より冷え込み、出勤時の気温はマイナス9度となった。まだ、夜間の咳は続いているが、今年の目標であるマイナス10度までは歩いて出勤することを目指し、20分間歩いて通勤した。風が弱かったので、完全装備で何とか耐えられた。しかし、鼻の中が痛…

免疫薬理ゲノム学(2) ; がんワクチン療法への期待と科学的解析

私が免疫系の多様性を、ゲノム解析の観点から調べる必要性を感じた理由のひとつは、がんペプチドワクチン療法をさらに科学的に解析したかったことにある。今では、がん免疫療法はがんの第4の治療法として医学的に確立されているが、ワクチン療法を始めたこ…

免疫薬理ゲノム学(1);一卵性双生児を区別する

私が米国に来てから取り組んでいる研究は、抗がん剤開発のための標的分子の解析と、免疫薬理ゲノム学である。後者は英語で「Immunopharmacogenomics」と命名している。これまでのゲノム研究は、遺伝性疾患やがんで起こっている遺伝子変化の研究が主であった…

がん免疫療法(4):変革期のがんワクチン療法-2

ペプチドワクチン療法は、がん細胞に特異的なタンパク質の一部分(ペプチド)を利用して、がん細胞だけを攻撃するリンパ球を増やすために設計された治療法である。前回示した、4種類に分類されるがん特異的タンパク質をもとに、免疫力を高める可能性のあるペ…

がん免疫療法(4):変革期のがんワクチン療法-1

がん細胞を殺す能力を持ったリンパ球の働きを高め、がん患者の治療成績を上げる目的で利用されるのががんワクチンである。「ワクチン」というと細菌やウイルスなどによる感染症を予防したり、重症化を防ぐもの、というイメージがあるが、ここでは、がんを治…

がん免疫療法(3):高額医薬品と医療費破産

免疫療法と言っても、いろいろな方法があるが、今、圧倒的に注目を集めているのが、免疫チェックポイント機能があるとされているCTLA-4, PD-1, PD-L1分子に対する抗体療法である。がん細胞を免疫細胞による攻撃から守るために重要な役割をしているのが、免疫…

がん免疫療法(2):「詐欺よばわり」から「第4の治療法」への道

最新の話を始める前に、記録に残る最初のがん免疫治療を振り返ってみたい。それは、なんと百数十年前に遡る。1885年全身に広がった骨肉腫(骨にできるがん)の腫瘍部に細菌感染が起こった(膿がたまっているような状況)。感染症の治療を続けるも、全身状態…

がん免疫療法(1):「詐欺よばわり」から「第4の治療法」への道

がんの「免疫療法」には、数十年にわたって、「いかがわしい」、「胡散臭い」、「ペテン」、「詐欺」などという、芳しくないレッテルが張られていた。私も外科医をしていたころから、免疫療法には悪い印象しか持っていなかった。1990年にがん細胞特異的な抗…