医療(がん免疫・免疫ゲノム学)

膵臓がん長期生存患者にはネオアンチゲンとそれに反応するリンパ球が多い

膵臓がんは最も予後の悪いがんであり、5年生存率は依然として一桁台である。一般的にはステージ1で診断された場合には予後はいいが、膵臓がんに関しては約3分の2が再発する。11月23日号のNatureに長期生存膵臓がん患者の特徴を調べたデータが掲載されていた…

リキッドバイプシーで免疫治療の効果予測?

10月号の「Clinical Cancer Research」誌に「Hypermutated Circulating Tumor DNA: Correlation with Response to Checkpoint Inhibitor–Based Immunotherapy」(免疫チェックポイント抗体治療法の効果が、血漿中DNAに遺伝子異常が高頻度に検出されることと関…

切除不能第3期非小細胞肺がん患者・化学放射線療法後の抗PD-L1療法

今日の「New England Journal of Medicine」誌に「Durvalumab after Chemoradiotherapy in Stage III Non–Small-Cell Lung Cancer」という論文が掲載されていた。Durvalumabは抗PD-L1抗体であり、対象となったのは、第3期の局所進行・切除不能肺非小細胞がん…

がん細胞はHLA遺伝子を欠落させて免疫系から逃げる!

11月30日号の「Cell」誌に「Allele-Specific HLA Loss and Immune Escape in Lung Cancer Evolution」という論文が掲載されていた。非小細胞肺がんを詳細に調べた結果、早期のがんの40%でHLA遺伝子の存在する部位が、細胞から欠け落ちていたそうだ。遺伝子が…

  胃がんに対する抗PD-1抗体治療;効果はPD-L1に関係ない???

日韓台のアジアグループによる、PD-1抗体を利用した胃がんの臨床試験の結果がLancet誌に公表された。一流の臨床系雑誌にアジアのデータが報告されるのは誇らしいことだ。少し残念だったのは、責任著者が国立がんセンター中央病院の医師であったにもかかわら…

がん治療を変革する「ネオアンチゲン」と「リキッドバイプシー」

Google Scholarで「ネオアンチゲン」「リキッドバイオプシー」を検索すると、前者は2013-2015年間で約1670件ヒットしたのに対し、2016年1390件、2017年は今日の時点で1430件であった。「リッキドバイプシー」は2013-2015年で1200件のヒットが、2016年13,800…

免疫療法報道の愚;リテラシーなきメディア

またまた、馬鹿メディアがやらかした。NHKが「厚生労働省が地域のがん治療の中核に指定している拠点病院のうち全国の少なくとも12の病院が、がん治療の効果が国よって確認されておらず保険診療が適用されていない免疫療法をおととし実施していたことが、N…

ワシントン大学で9臓器のがんにネオアンチゲン療法

今日、午後4時からワシントン大学(セントルイス)のSchreiber教授のセミナーがあった。タイトルがPersonalized Immunotherapyだったので、時差ボケと闘いながら講演を聞きに行った。2-3年前にもシカゴ大学で講演したことがあったが、魅力的なタイトルに惹か…

肝臓がんと胃がんに免疫チェックポイント抗体が承認

初めてのベトナムだが、運転マナーの悪さには驚くばかりだ。多くのバイクが道路を左へ右へと走り、右折左折時には、いつ衝突するのかとビクビクするような状況だ。また、大気汚染は中国ほどでもないがかなりひどい。しかし、ベトナムの若者たちは元気だし、…

CD4細胞を利用したTCR導入T細胞療法

1ヶ月ほど前のJournal of Clinical Oncology(米国臨床腫瘍学会の雑誌)に「Treatment of Patients With Metastatic Cancer Using a Major Histocompatibility Complex Class II–Restricted T-Cell Receptor Targeting the Cancer Germline Antigen MAGE-A3…

CAR-T細胞療法475,000ドル(約5000万円)!天文学的になるがん治療費

今、サンディエゴにいる。シカゴの家を出てから、片道7時間。アメリカは広いと実感するには十分だ。某バイオベンチャーと共同研究の可能性を探るためだ。しかし、1泊2日で、往復14時間以上は高齢者には厳しいものがある。今日は夕食、明日の朝は、会社で会…

米国FDAがペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)と他剤との併用で注意喚起

8月31日付けで、米国FDAはペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)とデキサメサゾン(ステロイド)+免疫調節薬(レナリドマミド 、ポマリドミド)との併用に対する注意喚起を行った。ペムブロリズマブとこれらの他の薬剤を利用した、多発性骨髄腫に対する2つの臨床…

米国FDAがCAR-T細胞療法を承認

8月9日のブログで予告したが、今日、米国FDAは急性リンパ性白血病に対するCAR-T細胞療法を承認した。そして、「The U.S. Food and Drug Administration issued a historic action today making the first gene therapy available in the United States, ushe…

キメラ抗体治療法(CAR-T細胞療法)の壁+北朝鮮危機

日本の防衛省が「北朝鮮はすでに核弾頭を準備している可能性がある」と言ったことが大きな話題になっている。トランプ大統領は、北朝鮮の「ワシントンに重大な教訓を知らしめてやる」という脅しに、「これ以上米国を脅すと、北朝鮮を大変な目に合わせるぞ(N…

急性骨髄性白血病の新薬エナシデニブ+融合細胞を利用した免疫療法

トランプ政権は、相も変わらず、理解不能だ。10日前に任命された広報部長が辞任した(というより、解任された)。下品な言葉で他人を罵倒していたので、解任される可能性を前回のブログで指摘したが、思いの他、解任まで短かった。有事の際、米国がまともな…

二重特異性抗体を患者体内で作り出すがん治療法

半年ほど前に、二重特異性抗体の白血病治療への応用を紹介した。今回は、二重特異性抗体そのものを注射するのではなく、二重特異性抗体を作り出すmRNAを静脈注射して、肝臓に取り込まれたmRNAが二重特異性抗体を作り出す形にしても治療効果があった話だ。7…

CAR-T細胞療法承認に向けて

米国医薬品局(FDA)の 「Oncologic Drugs Advisory Committee」 はCATR-T細胞療法に 「the treatment could be approved by the FDA by the end of September, forging a new path in the immunotherapy frontier.」と推薦した。もうひとつの新しい免疫療法…

無治療ステージ4非小細胞肺がんに対するニボルマブ;抗がん剤に優位性なし

これまで独走の感のあった免疫チェックポイント抗体治療に少しブレーキがかかった。無治療のステージ4非小細胞肺がんに対するニボルマブ対プラチナ系抗がん剤の比較試験結果がNew England Journal of Medicineに報告された。 エントリー基準はPD-L1の発現が…

二つの事実+評価が二転三転の免疫療法

コミー元FBI長官の議会での証言とトランプ大統領の発言が完全に対立している。コミー氏は「食事は大統領から誘われた」「忠誠を求められた」「フリンの捜査をやめるように言われた」と言い、大統領は「コミー氏が求めてきた」「忠誠など求めたことがない」「…

Make Our Plant Great Again

トランプ大統領のパリ協定離脱宣言、解雇されたFBI元長官の議会での公聴会など、政治の話題が尽きない米国だ。G7や中国の首脳も、米国のパリ協定からの離脱を非難していたが、その中でも洒落た一言でトランプ大統領を皮肉っていたのが、フランスのマクロン新…

新しい免疫療法へ大きな潮流

シカゴの5月は寒い日が続いており、20度を越える日はまだないし、今後1週間も期待できない。昨日は最高気温9度と、東京では冬並みに冷え込んだ。 その昨日の夕方、オランダのアムステルダム大学のTon Schumacher教授の「T cell recognition of human cancer…

腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)療法が効いた症例での抗原は?

先月号のScience誌に「Landscape of immunogenic tumor antigens in successful immunotherapy of virally induced epithelial cancer」という論文が公表された。これは、腫瘍内に浸潤しているリンパ球(Tumor infiltrating lymphocyte=TIL)を取り出し、培養…

ネオアンチゲン 対 細胞傷害性CD4細胞!?

シカゴは一気に春の陽気となり、今日は快晴で気温も20度近くまで上がるようだ。しばらく曇天が続いていたので、灰色だった湖面の色が、エメラルド色に輝き、気持ちも晴れやかになる。しかし、がんの免疫療法を巡る世界はますます難しくなってきた。 話は少…

がんの延命から治癒へ;プレシジョン医療―(4)

シカゴに戻っての1週間、体が鉛のように重かった。日本滞在中はかなり無理した自覚はあったが、歳には勝てない。そのためか、昨夜は12時間近く寝てしまった。こんなに長く寝た記憶はない。しかし、おかげで、霞がかかっていたような頭がスッキリとした。 今…

制御性NK細胞?!

今、シカゴ・オヘア空港にいる。私は長旅は嫌いだが、今週と来週の土曜日の講演会に加え、今回はプレシジョン医療を本格的に始動させるために、いろいろな方々とお会いする予定で忙しい。さらに、金沢への日帰りもある。土曜から土曜までの8日間で予定されて…

ムーンショット計画の行方

バイデン前副大統領が久々に公の前でスピーチをして、「私はがんを克服する大統領になりたかった」とコメントをした。そこれ気になるのが、がんの治癒を目指す「ムーンショット計画」の行方だ。計画に携わっている人によると、トランプ大統領も計画の内容自…

制御性T細胞を利用した・標的にした治療

火曜日の内科の学術講演会は「制御性T細胞」を利用した、あるいは、標的にした治療の話だった。免疫反応は、必要な時に活性化され、細菌やウイルス感染を抑えるが、不必要になると免疫反応のスイッチをオフにする必要がある。活性化と抑制の微妙なバランスが…

二重特異性抗体??による白血病治療

暖かい2月が終わった途端に急に冷え込み、昨日と今朝は雪が舞って、冬に逆戻りだ。気温は平年並みになっただけなのだが、体は、暖かさに鈍ってしまったのか、ついていけない。明日の朝はマイナス7度まで下がり、月曜日は19度まで温度が上昇する。ジェットコ…

ネオアンチゲンT細胞療法の歴史を学ぶ

今日、シカゴ大学で私たちが共同研究している、Hans Schreiber教授のセミナーがあった。彼は1995年にがんで起こっているミスセンス変異(遺伝子変異によってたんぱく質を構成しているアミノ酸が別のアミノ酸に変わる異常)が、リンパ球ががん細胞を攻撃する…

KRAS遺伝子異常(G12D)+ HLA-C*08:02を持つ患者へのT細胞療法

誕生日の日の昼食にリンゴを齧っていたところ、口の中でガリッと音がした。不吉な予感がして舌で歯を探ってみたところ、上の前歯にぽっかりと穴が開いている。波乱の1年の幕開けだ。リンゴはしばらく食べていなかったが、イタリアンマーケットで買ったリンゴ…