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KRAS遺伝子異常(G12D)+ HLA-C*08:02を持つ患者へのT細胞療法

誕生日の日の昼食にリンゴを齧っていたところ、口の中でガリッと音がした。不吉な予感がして舌で歯を探ってみたところ、上の前歯にぽっかりと穴が開いている。波乱の1年の幕開けだ。リンゴはしばらく食べていなかったが、イタリアンマーケットで買ったリンゴ…

免疫チェックポイント抗体医薬品の大流行;日本はどうするのか!

今週号の「New England Journal of Medicine」誌に免疫チェックポイント抗体薬を利用した臨床試験の論文が3編も掲載されていた。利用されている抗体も対象となるがん種も異なる。その組み合わせは、頭頸部がんXニボルマブ、非小細胞肺がんXペンブロリズマブ…

マンモグラフィーは過剰診断につながるのか??????

日本癌学会が終わってシカゴに帰る頃には紅葉が進んでいると思っていたが、例年よりかなり気温の高い気候のためか、10月8日に戻った時には、9月末にシカゴを離れた頃とあまり変わっていなかった。しかし、一昨日から急に気温が低下し、出勤時の気温が6-7度ま…

的外れの高額がん治療薬問題ー2

前回に続き、高額がん治療薬の問題を取り上げる。下記に3ヶ月間治療を受けた場合の薬剤費を示したが、確かに、抗PD-1抗体(ニボルマブ)や抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)はとんでもなく高額だが、桁外れに高額というわけでもないし、高額抗がん剤の問題も最近…

化学療法無治療の進行性非小細胞肺がんに抗PD-1抗体を投与すると?

9月1日発刊の米国臨床腫瘍学会雑誌に「Nivolumab Monotherapy for First-Line Treatment of Advanced Non–Small-Cell Lung Cancer」という論文が公表された。ニボルマブ(抗PD-1抗体)は、他の治療を受けた肺がんに対して、第2選択薬以降の治療法としてすで…

抗PD-1抗体、日米で続々と適応拡大

免疫チェックポイント抗体のひとつ、抗PD-1抗体の適応拡大が止まらない。日本では腎がんに対する適応が承認され、そして、米国では、今日8月5日に、頭頚部がんに対する適応が承認された。174名の患者中、腫瘍縮小は28名(16%)に認められ、28名中23名で効果…

ニューヨークタイムズ「免疫療法特集」

私の知人から、7月30日のニューヨークタイムズ第1面に「免疫療法の特集」が出ていると連絡があった。患者さんや医師へのインタビュー、免疫療法の歴史、科学的な作用機序など、かなり長文の特集であった。以前、このブログでも紹介した1890年代のコーリー博…

免疫チェックポイント抗体薬副作用の人種差?

米国では、共和党、民主党の党大会も終了し、いよいよ11月の大統領選向けて、次の段階へと移行しつつある。これらの党大会は大統領選挙に向けたショー的なアピールの場であると同時に、党としての公約を明確にする場である。国をどういう方向に導くのかを…

免疫チェックポイント抗体の効果を予測する!?

今日、OncoImmunologyという雑誌に、われわれのグループと熊本大学の福島聡先生たちを中心とするグループの共同研究の成果が公表された。http://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/2162402X.2016.1204507. 論文のタイトルは、「Intratumoral expression …

世界に発信できる『日の丸』がん治療を(2)

帰国後1週間近くが経ち、ようやく、6月に2度の日本出張から、立ち直りつつある。しかし、カレンダーを見ると、今週金曜日には7月に入り、また、来週の土曜日から、香港に出張なので、気が滅入ってくる。長い旅程を考えるとキャンセルしたいという誘惑が襲っ…

進行がんも、転移がんも治癒させるのだ;T細胞受容体導入T細胞療法

シカゴの天候は、早春と真夏を行き来するような激しい変化で、4-5日前は最高気温が20度を切っていたが、金曜日・土曜日は35度近い暑さとなり、今日は25度程度、明日は再び35度弱の予想と目まぐるしく変化している。昨夜は、学会などが頻回に開催されるマイア…

免疫チェックポイント抗体治療に対する「姥捨て山」論の愚

米国では、CTLA-4抗体、PD-1抗体、PD-L1抗体の3種の免疫チェックポイント抗体薬が承認され、これ以外の抗体治療薬の開発も進んでいる。抗体医薬の他にも、免疫抑制に働く、IDO(Indoleamine-pyrrole 2,3-dioxygenase;インドールアミン-2、3-ジオキシゲナー…

化学療法+ペプチドワクチン療法?!?!

昨日、シカゴに戻ったときは、ニューオーリンズよりも気温が高く、まるで真夏のような感じだったが、今朝の気温は6度と20度も下がり、コートを羽織って出勤した。ただし、ニューオーリンズで感じた、免疫療法に対する燃え滾るような熱気は、私の気持ちに火を…

米国癌学会2016は免疫療法のターニングポイント

今は、ニューオリンズからシカゴに向かう機中にいる。プログラムを見ても、会場で話を聞いても、免疫療法が大きなうねりになっていることが明らかだ。これまで免疫療法に取り組んできた研究者や医師に加え、ゲノム研究者がネオアンチゲン療法に向かって猪突…

がん個別化医療(Cancer Precision Medicine)2016-(1)

太平洋戦争が始まって、74回目の記念日を迎える12月8日、私はシカゴに来て4度目の誕生日を迎える。この国に住まずとも、一度でも訪問すれば、国土の広さとその資源の豊かさに触れ、米国に戦争を仕掛けた愚かさを誰でも実感するはずだ。ほとんどの方にとって…

米FDA、腎臓がんに対する抗PD-1抗体(ニボルマブ)を承認

米国時間11月23日付けで、米国FDAは抗PD-1抗体(ニボルマブ)を進行腎臓がんへの適応を承認した。mTORという分子の働きを阻害するエベロリムスとの比較対象試験の結果、優位性が示されたことを受けたものである。 この試験は、ニボルマブを2週間ごと、体重1kg…

がんと腸内細菌;予期せぬ関連―腫瘍内免疫環境と腸内細菌

先週の「Science」誌に、腸内細菌が、腫瘍内の免疫環境、免疫チェックポイント抗体の効果に影響する可能性を示した論文が2報発表された。それに付随して、「Cancer and the gut microbiota: An unexpected link」(がんと腸内細菌;予期せぬ関連)と称する…

「がん細胞 対 免疫細胞」の闘い(3)

米国に来てから頻回に遭遇するのが、試薬の在庫切れだ。納入の日にちを守らないことも日常茶飯事だ。車を購入した時も、「a few minutes」が2時間だったことがある。時間に厳密な私の精神構造には、このいい加減さに対する免疫寛容ができてこない。時間を守…

「がん細胞 対 免疫細胞」の闘い(2)

昨日の間に、残りを書き上げる予定であったが、夕方、全く何の予兆もなく、突然にiPhoneの画面が真っ暗になってしまった。バッテリー残量は十分にあったはずだと思いながらも、何かの拍子にバッテリーがなくなったのかと安易に考えていた。しかし、家に帰っ…

「がん細胞 対 免疫細胞」の闘い(1)

ここ4-5日は30度を超える気温で、ようやく夏の気候だ。今週はこのまま推移しそうで、私の好きな夏の晴れ晴れとした気候になってきたが、患者さんからのメールを受け取るたびに、心の中に霞がかかる。昨年10月の論文公表以来、日本だけでなく、イギリスやギリ…

腫瘍免疫ゲノム学-12;非小細胞肺がんに対する抗PD-1抗体治療

米国臨床腫瘍学会の時期にオンラインですでに「非小細胞肺がんに対する抗PD-1抗体治療」論文が公表されていたが、今週号の「New England Journal of Medicine」に発刊されたので、改めて、この抗PD-1抗体治療に関するデータを振り返ってみたい。 (1)生存率…

腫瘍免疫ゲノム学―11;移植片対宿主病と移植片対白血病

「移植片対宿主病(Graft-versus-host Disease:GVHD)と移植片対白血病効果(Graft-versus-leukemia:GVL)」といっても、これらの医学用語は、一般の方にはとてもわかりにくい。造血幹細胞移植治療によって、移植されたリンパ球などの免疫細胞が、…

腫瘍免疫ゲノム学-10;米国癌学会(2)

忙しいので、3日間だけ参加してシカゴに帰ってきた。2000年くらいまではアジア人では日本人が圧倒的に多かったが、今は、中国人が圧倒的に多い。企業の展示ブースを見ても、数年前まではほとんど皆無であった中国の企業の展示が増えている。米国癌学会も積極…

腫瘍免疫ゲノム学―9;米国癌学会

今、米国癌学会に参加するため、フィラデルフィアにいる。シカゴからフィラデルフィアに向かう飛行機の中で十数人の日本人を見かけた。6-7人の人に頭を下げられたが、顔と名前が一致したのは2人だけだ。こちらも頭を下げたが、申し訳ないが相手が誰だかわ…

腫瘍免疫ゲノム学―8

今日、シカゴ大学で「Cancer Immunotherapy(がん免疫療法)」と称するシンポジウムがあった。朝8時から午後5時までの長丁場だった。演者にはJames Allison(MD Anderson Cancer Center)、Nicholas P Restifo(National Cancer Institute)、Antoni Ribas(…

腫瘍免疫ゲノム学-7; がんの治癒に挑め

Natureという雑誌に「Radiation and dual checkpoint blockade activate non-redundant immune mechanisms in cancer」というタイトルの論文が紹介された。放射線治療と免疫チェックポイント抗体を併用すると効果が相乗的になること、これらの治療に対して、…

腫瘍免疫ゲノム学 速報;抗PD1抗体薬、肺扁平上皮がんに承認

米国医薬食品局(FDA)は今日付けで、抗PD1抗体治療薬Opdivo (nivolumab)を進行肺扁平上皮がん治療薬として承認した。135人の抗PD1抗体治療薬を受けた患者と137人のドセタキセル治療を受けた患者との比較から、その優位性を認めて承認したものである。同じ条…

Immunotherapy responders / non-responders

これは下記の読売新聞のコラムの英訳です。 中村祐輔の「これでいいのか!日本の医療」 : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞) 中村祐輔の「これでいいのか!日本の医療」 : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞) The number of somatic mutations has been b…

腫瘍免疫ゲノム学―6:ネオアンチゲンとオンコアンチゲン

遺伝子変異数とがん組織での免疫反応の強さ、あるいは、遺伝子変異数と免疫チェックポイント抗体の効果が関連する研究成果を紹介してきた。これらを背景に、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含むペプチド(ネオアンチゲン)を治療用抗原(ワクチン)として利用す…

腫瘍免疫ゲノム学―5

がん組織内へのリンパ球浸潤パターンは、患者ごとに大きく異なっている。しかも、キラーTリンパ球、ヘルパーTリンパ球、制御性Tリンパ球と異なる役割ごとに区別してみると、がん組織内に分布しているパターンもかなり異なっている。下図のリンパ腫のケースで…

腫瘍免疫ゲノム学―4

今朝もマイナス18度まで冷え込んだ。この温度で歩いて通勤するのは厳しいので、バスで通勤するつもりで家が出たが、定期入れを忘れたことに気付いた。風があればとても寒くて歩けないが、風もほとんどなく、完全装備していたためか、それほど寒く感ぜず、…

腫瘍免疫ゲノム学(3-2):2種類の免疫チェックポイント抗体の違い

久しぶりに日本で講演会をした。どうも日本語が滑らかに出てこなかった。講演時間がシカゴ時間で夜中の0時30分開始という悪条件を差し引いても、もどかしいと感じながらの50分間であった。わざわざ来られた聴衆の方には申し訳なく思う。かつてユタ大学…

腫瘍免疫ゲノム学―(3):延期のお知らせ

今、ようやくオヘア空港のラウンジに着いた。普段は2時間くらいここにいるのだが、今日は1時間弱しかない。二つの事故が重なったので、予定より、1時間近く遅くなってしまった。最初は、リムジンのチョンボである。予約時間になっても来ないので、会社に…

腫瘍免疫ゲノム学(2):がん組織内での免疫環境を規定する因子

大規模ながんゲノム解析や発現情報解析の結果から、遺伝子異常数が多いほど、CD8細胞の浸潤レベルの高いことを紹介した。われわれは、80症例異常の膀胱がんの遺伝子子異常を解析し、DNAの修復に関係する遺伝子に異常のある膀胱がんは、遺伝子変異数の多いこ…

腫瘍免疫ゲノム学(Oncoimmunogenomics)(1)「がん細胞での遺伝子異常が多いと免疫を強く活性化する」

Cellという雑誌の2015年1月号に「がん細胞における遺伝子異常とがん組織での免疫反応」に関する興味深い論文が報告された。英文のタイトルは「Molecular and Genetic Properties of Tumors Associated with Local Immune Cytotoxic Activity」である。…

免疫薬理ゲノム学(3);食物アレルギー・自己免疫疾患

食物アレルギーで、真っ先に私の頭に思い浮かぶのは、ピーナッツアレルギーである。5年ほど前に、フットボール選手か、サッカー選手かは忘れたが、恋人とキスをした後に、アナフィラキシーショックを起こして急死した話をニュースで知った。原因は、キスをし…

中村研究室の事件簿(2)

1. 鍵束持ち出し事件(新横浜と名古屋の間に停車駅を作って??) 多くの研究室では、研究室の部屋の鍵を束ねて、特定の場所に隠して管理している。私の研究室では、朝最初に来た研究員が(といっても私が最初のことが多いので、実質的には2番目)、全室の鍵…

がん免疫療法;米ファイザーとドイツのメルクの提携

今朝は予想より冷え込み、出勤時の気温はマイナス9度となった。まだ、夜間の咳は続いているが、今年の目標であるマイナス10度までは歩いて出勤することを目指し、20分間歩いて通勤した。風が弱かったので、完全装備で何とか耐えられた。しかし、鼻の中が痛…

免疫薬理ゲノム学(2) ; がんワクチン療法への期待と科学的解析

私が免疫系の多様性を、ゲノム解析の観点から調べる必要性を感じた理由のひとつは、がんペプチドワクチン療法をさらに科学的に解析したかったことにある。今では、がん免疫療法はがんの第4の治療法として医学的に確立されているが、ワクチン療法を始めたこ…

免疫薬理ゲノム学(1);一卵性双生児を区別する

私が米国に来てから取り組んでいる研究は、抗がん剤開発のための標的分子の解析と、免疫薬理ゲノム学である。後者は英語で「Immunopharmacogenomics」と命名している。これまでのゲノム研究は、遺伝性疾患やがんで起こっている遺伝子変化の研究が主であった…

がん免疫療法(4):変革期のがんワクチン療法-2

ペプチドワクチン療法は、がん細胞に特異的なタンパク質の一部分(ペプチド)を利用して、がん細胞だけを攻撃するリンパ球を増やすために設計された治療法である。前回示した、4種類に分類されるがん特異的タンパク質をもとに、免疫力を高める可能性のあるペ…

がん免疫療法(4):変革期のがんワクチン療法-1

がん細胞を殺す能力を持ったリンパ球の働きを高め、がん患者の治療成績を上げる目的で利用されるのががんワクチンである。「ワクチン」というと細菌やウイルスなどによる感染症を予防したり、重症化を防ぐもの、というイメージがあるが、ここでは、がんを治…

がん免疫療法(3):高額医薬品と医療費破産

免疫療法と言っても、いろいろな方法があるが、今、圧倒的に注目を集めているのが、免疫チェックポイント機能があるとされているCTLA-4, PD-1, PD-L1分子に対する抗体療法である。がん細胞を免疫細胞による攻撃から守るために重要な役割をしているのが、免疫…

がん免疫療法(2):「詐欺よばわり」から「第4の治療法」への道

最新の話を始める前に、記録に残る最初のがん免疫治療を振り返ってみたい。それは、なんと百数十年前に遡る。1885年全身に広がった骨肉腫(骨にできるがん)の腫瘍部に細菌感染が起こった(膿がたまっているような状況)。感染症の治療を続けるも、全身状態…

がん免疫療法(1):「詐欺よばわり」から「第4の治療法」への道

がんの「免疫療法」には、数十年にわたって、「いかがわしい」、「胡散臭い」、「ペテン」、「詐欺」などという、芳しくないレッテルが張られていた。私も外科医をしていたころから、免疫療法には悪い印象しか持っていなかった。1990年にがん細胞特異的な抗…