プレシジョン医療

人工知能による病理組織学的診断は実用化レベルに進化

今月号のNature Medicine誌に「Clinical-grade computational pathology using weakly supervised deep learning on whole slide images」という論文が掲載されていた。簡単に言うと「人がわずかに指導するだけで、臨床応用可能な病理診断ができるようになっ…

乳がん術前化学療法とリキッドバイオプシー;結果を盲目的に信じていいのか?

今週号のScience Translational Medicine誌に「Personalized circulating tumor DNA analysis to detect residual disease after neoadjuvant therapy in breast cancer」というタイトルの論文が掲載されていた。乳がんの術前化学療法の効果とリキッドバイオ…

病理学的画像解析でがんの遺伝子不安定性がピタリとわかる?

今月号のNature Medicine誌に「Deep learning can predict microsatellite instability directly from histology in gastrointestinal cancer」という論文が掲載されている。このmicrosatellite instability(MSI=マイクロサテライト不安定性)は免疫チェッ…

スマートウオッチが心電図を読み、危険な高カリウム血症を推測

10日間の連休中、持て余した時間を利用して、様々な分野の読書に励んだ。まだ、完全に読み切れていないが、その1冊が「Deep Medicine」というハードカバーの本である。著者はEric Topolという方で、循環器内科医だそうだが、Google Scholarではゲノム、ウエ…

ゲノム医療入門―5:リキッドバイオプシー

内閣府の「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」プロジェクトの中で、リキッドバイオプシーの実装化に取り組んでもらっている。日本は、海外で実用化された技術に周回遅れで取り組んでも、それが世界の最先端と大ぼらを吹ける人たちが国をリードして…

ゲノム医療入門―4

米朝関係は、メディアの予想がほぼ総外れになる結果となった。予測不能のトランプ大統領の面目躍如とも言えるが、これでまた先の見えない国際情勢となった。「トランプはやはりトランプだ」という評価で傷は浅いように思うが(ロシア疑惑は別だが)、北朝鮮…

ゲノム医療入門―3

今日は病気のゲノム・遺伝子診断に移りたい。といっても、これにも多様な種類が含まれているので、大きな分類をするだけでも大変であ ゲノム・遺伝子を利用した病気に関わる医学研究・医療を大きく分類すると、遺伝的な病気や病気のリスクの診断(遺伝性疾患…

ゲノム医療入門―2

前回は法医学的な分野の紹介をしたが、今回は、感染症関係を簡単に触れたい。炭そ菌を郵送するバイオテロ事件が仮想のものではないことを覚えておられると思う。最近は、麻疹(はしか)が流行して騒ぎとなっているが、はしかやおたふくかぜの流行は、行政の…

ゲノム医療入門―1

「遺伝」と「遺伝子」、「ゲノム医療」と「臨床遺伝診断」は同じ言葉のように聞こえるが、その内容はかなり異なる。日本では、親から子へと受け継がれる概念であるHeredity「遺伝」と科学的な概念であるGene「遺伝子」に同じ「遺伝」という言葉が用いられて…

腰椎穿刺液を用いた脳腫瘍のリキッドバイオプシー

日曜日に気晴らしにボーリングに言った。第5フレームを終わった所で93点と絶好調だった。しかし、次の瞬間、悪魔に襲われた。人間、欲をかくとダメなことを理解しているはずだが、本能が冷静さを失わせた。力を込めて次のボールを投げ終わった途端に左の大腿…

免疫チェックポイント抗体の効果予測をリキッドバイオプシーでする!?

「Nature Medicine」誌に「Blood-based tumor mutational burden as a predictor of clinical benefit in non-small-cell lung cancer patients treated with atezolizumab」というタイトルの論文が掲載されていた。Atezolizumabは免疫チェックポイント抗体…

頭に来てもアホとは戦うな!

今週の月曜日から、がん研究会・がんプレシジョン医療研究センター所長として勤務している。内閣府のプロジェクトもあり、自宅・内閣府・がん研究会のトライアングルの通勤はかなり体に堪える。シカゴと比較すると気温は少ししか変わらないが、この纏わりつ…

乳がん治療薬タモキシフェン処方に対するガイドライン

今日のASCO(米国臨床腫瘍学会)からのニュースに「CLINICAL PHARMACOLOGY & THERAPEUTICS」という雑誌に「Clinical Pharmacogenetics Implementation Consortium (CPIC) Guideline for CYP2D6 and Tamoxifen Therapy」という論文が公表されたとあった。以前に…

シカゴで6年ー遺伝子パネルが全エキソン解析か?;全エキソン解析はがん患者や家族に希望が提供できる!

6年前の2012年3月29日に東京を経ち、シカゴに向かった。早いもので、もう、6年になる。まだ、50歳代だった私だが、60歳代の半ばになってしまった。そして、東京大学医科学研究所の凋落は著しく、理化学研究所ゲノム医科学研究所は名前が消え、バイオバンクジ…

リキッドバイオプシーのがんスクリーニングへの応用はまだ時期尚早か?+米国FDAが遺伝性乳がん・卵巣がん遺伝子のDTCテストを承認

2月中旬以降のシカゴは、比較的穏やかな日が続いている。最低気温もプラスで歩いての通勤が心地よい。しかし、時差ぼけが取れず、依然として午前3-4時に目が覚める日々だ。眠りにつくために、アルコールを飲むので、身体に悪いと知りながらも摂取量が増えて…

限られた数の遺伝子の解析か、全エキソン解析か?-1;ガラパゴス化以下のピンボケ日本

日本ではようやく限られた数の遺伝子パネルを用いた「ゲノム医療」が開始されようとしている。伝わってきた情報によると、1回当たり、50-100万円だそうだ。前回紹介した論文では、リッキドバイオプシーで61ヶ所を調べても500ドルを切ると書かれていた。こん…

プレシジョン医療-10; 500ドルでできるリキッドバイオプシーで、切除可能がんの70%を検出可能

Scienceの2月23日号に「Detection and localization of surgically resectable cancers with a multi-analyte blood test」というタイトルの論文が公表されていた。オンライン版は1ヶ月ほど前に出ていたが、見落としていた。8ヶ所の臓器の外科手術切除可能…

プレシジョン医療ー9; リキッドバイオプシーでのがんの早期診断は可能か?

リキッドバイオプシーでがんが見つけられるかどうか?結論はイエスだが、決して単純ではない。もし、リキッドバイプシーでp53遺伝子異常が見つかれば、どこかにがんが潜んでいる可能性はかなり高い。調べる方法によって疑陽性率が異なるが、血漿中の遺伝子断…

プレシジョン医療―8;リキッドバイオプシーの擬陽性・偽陰性率

検査には擬陽性と偽陰性の問題が常に付きまとう。「本来は腫瘍があるにもかかわらず、検査で陰性と判定されるのが偽陰性であり」、「腫瘍がないにもかかわらず、陽性と判定されるのが、擬陽性である」。リキッドバイオプシーは、この種の問題に関しては、こ…

がんプレシジョン医療ー7;がん細胞を見つける

この範疇には、ゲノム情報を利用して、「がんを早期診断すること」、「がんの再発を超早期に診断すること」、「手術後のがん細胞の残存を診断する」、「がん細胞を定量的に計測すること」などが含まれる。 これらを可能にしたのは、DNAシークエンス技術や遺…

がんプレシジョン医療ー6

私の考えるがんプレシジョン医療の全貌を下図に示す。これらは、 1.がん細胞を見つける 2.がんの治療薬を選択する(外科療法や放射線療法が第1選択肢の場合が多いが、それらは省く) 3.がん免疫療法を提供する の3要素から成り立つ。 「プレシジョン医…

がんプレシジョン医療入門-5;後天的遺伝子異常(体細胞変異)とがん

がんは遺伝子異常によって生ずる病気である。これは歴然たる事実であるが、がん種毎に、起こっている遺伝子異常数は下記の図のごとく、非常に違ってくる。乳がんと肺扁平上皮がんでは一桁違うし、一般的に小児で生ずるがんでは、遺伝子変異数は少ない。最も…

がんプレシジョン医療入門-4;遺伝的危険因子

遺伝的な危険因子を定義することは簡単ではないので、まず、わかりやすい例から紹介したい。食道がんには、喫煙と飲酒がリスク生活要因であることがよく知られている。これに、遺伝的危険因子が組み合わさった時に、食道がんのリスクがどのようになるのか図…

がんプレシジョン医療;入門-3

次に、がんの遺伝的要因について話を進めたい。日本では、十分な遺伝学教育、特に病気と遺伝子の関連性に関する教育、が欠けているため、がんの発症に決定的な役割を果たす因子(決定因子)とがん発症の確率をわずがに高める危険因子が混同されることが多い…

がんプレシジョン医療;入門-2

親から子へ受け継がれる遺伝子多型で、がん治療に関係するものも当然ある。有効性に関連するものとしては、乳がんの治療薬タモキシフェンと薬剤代謝酵素CYP2D6がある。これに関する研究は、相対する研究結果が多数発表されたが、結果的には、質の悪い研究が…

がんプレシジョン医療;入門-1

「プレシジョン医療」という言葉は、オバマ前米国大統領が2015年の一般教書演説で、「プレシジョン医療イニシアチブ」を提案したことから、広く利用されることになった。オバマ氏の発言を借りて、「プレシジョン医療」のゴールを説明すると、「the right tre…